出発直前のANA機の機内には、ドアが閉まった直後に「セット スライド バー」というアナウンスが流れます。これはどういった意味なのでしょうか。
「出発前のドア操作を実施するための業務指示」
ANA(全日空)機では、出発直前の機内で、ドアが閉まった直後に「セット スライド バー」というアナウンスが流れます。ANAファンのSNSユーザーなどは、「ANA便でいまから出発する」といった意味で「セット スライド バー」の投稿を行うことも。これはどういった意味なのでしょうか。
出発を控えたANA機(乗りものニュース編集部撮影)。
ANAによるとこれは「出発前のドア操作を実施するための業務指示」といいます。
旅客機のドアには、ふたつのモードがあります。この差は、開けたときに緊急脱出用スライド(脱出シュート)が出るかというところです。機体が動いているときは、万一の有事の際、ただちに旅客が機内から脱出できるよう、客室ドアを開けたらスライドが膨らみ、勢いよく射出するようになっています。一方、地上での駐機時は、人の乗り降りのためドアを開けても、スライドが出てしまわないようCAが設定を切り替えます。
このドアモード切り替えの動作は極めて重要で、大切な保安業務の一環です。一方、その切り替えの業務指示の文言は、航空会社ごとに定められているのが日本では一般的です。ANAの場合は、これが「セット スライド バー」にあたるのです。
しかし、この言葉は直訳すると「スライドのバーをセットせよ」という意味。ここで疑問なのが「スライドのバー」とは何なのか――ということです。
「スライドとバー」はどんな意味?
「スライド」は脱出用スライドのことを指し、「バー」はスライドを降ろすための「ガートバー(Girt Bar)」というパーツを指します。
アメリカの旅行メディア「ザ・ポインツ・ガイ(The Points Guy)」によると、ガートバーをドアのフレームと接続することで、スライドが出るようになるそうです。現代の旅客機では、ドアのレバーなどを動かす事で、このバーが機体側に固定され、スライドが出るモデルが多数。なお、ボーイング737シリーズなど一部モデルでは、レバーによる操作ではなく、実際に「バー」をドアにセットするシーンも見られます。
ちなみにANAによると「セット スライド バー」の文言が使用されたのは、2016年12月からとのこと。それ以前は「ドアーズ フォー ディパーチャー(Doors for Departure)」という言い回しだったそうです。この変更について、ANAは「より業務の目的に合わせた行動を指示するため」としています。
従来の「ドアーズ フォー ディパーチャー」の場合は、直訳すると「出発するためのドア」「出発の扉」など婉曲的な表現だったため、「スライドのバーをセットせよ」という言い回しに変更したということです。