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「毒親育ち」の呪縛からは逃れられない? “第二の被害者”を出さないためにできる【2つの方法】

マイナビウーマン

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大人になって以降、子育て中は特に自身の親子関係を振り返ることがあります。「どう育てられたか」「親に対してどういう感情を持っているか」「関係性はどうか」……これらは、今の自分を後押ししてくれることもあれば、足枷のように心を囚えネガティブな思考へ引き摺ることもあります。では、親子関係に悩んでいるのは子側だけなのでしょうか。

今回は、アドラー心理学に基づくカウンセリングを行うヒューマン・ギルドの代表で『娘が理解できません~大人になった娘のために、母親は何ができるか~』の著者、岩井俊憲さんに親子関係ついてお話をお聞きします。

前編では「自分は毒親に育てられた?」と感じたときの対処法をうかがいました。

「自分は毒親に育てられた」という人たち

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※写真はイメージです

――― 岩井さんはアドラー心理学に基づき多くの人々にカウンセリングをされていますが、最近の親子関係にはどのような傾向がありますか?

岩井 「毒親」という言葉をよく聞きますが、この言葉が過剰に広がっていると感じます。中には、本当はそうではないのに「自分の親は毒親だ」と決めつけられていることもあります。

自分を“毒親被害者”と決めつけないで

岩井 アドラー心理学における認知上の誤りとして「決めつけ」「誇張」「過度の一般化」があります。毒親という言葉ではまさに決めつけや過度の一般化が起こり、この言葉が広がったことで毒親というレッテルを貼られる人や、自分自身を毒親の被害者と思い込む人が増えています。中には「わたしは毒親に育てられたんだ、だから何もできないんだ」と人生の色々な面で言い訳にする人までいます。

でも本当に毒親に育てられても、世代間継承をしていない人もたくさんいます。

――― 世代間継承、つまり「親の行動を子が受け継ぐこと」ですね。

岩井 そうですね。今の自分を親のせいにすると、人生の当事者意識がなくなってしまう。それでいいのでしょうか。どんな事実があったにせよ、これからの人生はあなたが舵取りできる、というのがアドラー心理学の観点です。毒親という一言に囚われず、親子の関係を見直してもらいたいのです。

「脱・毒親育ち」のため、何ができる?

――― 「親のせいにしない」と言っても、親からされた嫌な記憶が深く根付いていると、なかなかそこから抜け出せないかもしれません。具体的に何か対策はあるのでしょうか?

岩井 親が毒親だったかもしれないと思ったら、やってみてほしいことが2つあります。

ほかの目撃者に話を聞き、“物語の書き換え”を

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※写真はイメージです

岩井 まずひとつは物語の書き換えです。

大人になったとき、「お母さんにこんな風に言われた」「こうしなさいと強制された」と被害者視点で過去が語られることがあります。しかし、過去の出来事は“思い込みで作られた物語”の可能性があり、客観的に見て事実だったかどうかわかりません。

なので、まずは“目撃者でもある自分以外の別の家族”に話を聞いてみることをお勧めします。

例えば、母親が毒親だと思うのであれば、お父さんに過去の辛かったやり取りを話してみる。すると「ちがうよ、お母さんは当時こうだったよ」と、自分が思っていたのとは“別の物語”を語ってくれることがあります。また、きょうだいに聞いてみるのもいいですね。「お母さんにこんなことをされて許せない」と打ち明けたら、「こっちはもっとひどかった」と返ってきて、自分だけが辛いわけではなかったと気づくかもしれません。

親が毒親だと疑う人には、過去の出来事の一部を切り取って歪曲し、誇張する傾向があります。すると悪しき毒親の被害者の物語が出来上がってしまいます。第3者の視点から事実を見直すと、実はそうではなかったケースがたくさんあるのです。家族に話を聞くほかに、アルバムを見るのもいいですね。「思い込んでいたけれどそうではなかった」と発見できることがあると思います。

――― 思い込みで親を毒親にしていないか、見直すことが大切なのですね。

“世代間継承”をストップする

岩井 もうひとつやってほしいのは、先ほども少し話しました「世代間継承」についてです。これを自分で終わらせて欲しいのです。

毒親に育てられたと思っている人は、自分も子どもに同じ対応をしてしまうことが少なくありません。親にやられたことは無自覚に同じことを自分もやってしまいがちですが、それは子どもを傷つけ続けることになってしまいます。そうならないために、自分の体験にはない「新しい子育て」を学ぶ必要があります。自分がなしえなかった“親子関係の物語”を、子どもと共同作業で一緒に作っていくのです。

このとき大事にしたいのは「相互尊敬」「相互信頼」に満ちた対応をすることです。親子がお互いに尊敬して信頼することが大切で、これらが欠けたときに親子間の問題が起こるのです。

とはいえ、自分の対応が尊敬と信頼のあるものになっているか、判断が難しいという人もいるでしょう。そんな時は、「もし相手が友人だったら絶交されそうなことかどうか」を、一つの目安にするとわかりやすいでしょう。

相手の食べ方などを厳しい言葉で叱責したら……友人なら離れていきますよね。ストーカーのようになんでも干渉したら……友人なら嫌われますよね。

親は子どもを客観視することが難しく、自分の分身のように同一視してしまうものです。一方で、いい友人関係を築くには尊敬と信頼に基づいた節度のある距離感が大切です。子に自分と同じ目をあわせないように、考え方やふるまいを変えていきましょう。

「やめる」ではなく「追加」で改める

――― 友人にはしないようなNG行動を自分に禁止する、という考え方で合っていますか?

岩井 何かをやめようとすると余計に執着してしまいます。「しない」を決めるのではなく、行動のレパートリーの中により関係性がよくなるものを「追加していく」ことで、古いものの存在を薄くしていきましょう。

汚水に例えるなら、容器の中の汚れだけを取り除こうとするとなかなかうまくいかないけれど、きれいな水をどんどん足していくと汚れは薄まっていきますね。

親子関係で言えば。汚れは「過干渉」などでしょう。では、きれいな水はどのように足していくかというと、自分がやりたいことをするのではなく、「されたらありがたいことをする」という尺度で考えるといいですね。要は、相手の心で考える共感力が大切ということです。

(マイナビ子育て編集部)

岩井俊憲さんのインタビュー後編へ続きます。

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本書は、「大人になった娘が理解できない」と困っている母親に向けた本です。

著者はアドラー心理学の第一人者として、長年親子関係の問題に取り組んできました。アドラー心理学は「未来志向の心理学」といわれ、過去の原因追及やダメ出しをせず、現状を改善するための思考を重視します。著者は、読者が自分なりに精一杯がんばって子育てをしてきたことに共感を示しながら、豊富なカウンセリング体験や自身の体験をもとに、母娘関係の問題をやさしく紐解いていきます。

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