婚活で、「いいな」と思ったお相手に出会えたら、寄り道をせずに関係を前に進めたいと、誰もが思いますよね。ただ、どうしたらスムーズにそれができるのか。「私はあなたとの結婚を真剣に考えていますが、あなたはどうですか?」というような直球勝負はかけにくい…。さりげなく、でも確実に関係を前に進めるにはどうしたらよいのでしょうか。今回は、そこを一緒に考えていきましょう。
直球勝負は、失敗のもと
内山しょうじさん(41歳、仮名)から、「ご相談したいことがあります」と連絡が入ってきました。しょうじさんは、大木ひさみさん(36歳、同)と先月お見合いし、既に4回目のデートを終えたところでした。
「お見合いのときから、すごく話が合うなと思ったし、週1ペースで週末デートができていました。4回目のデートは、午前中から会って12時間以上、一緒にいたんです。とても楽しかったので、別れ際に思い切って、『お付き合いを前に進めませんか?』と言ったんですね。そうしたら、うまく話をそらされて返事をもらえないまま、ひさみさんは帰っていきました」
結婚相談所には、「仮交際」と「真剣交際」の区分があります。しょうじさんの、「お付き合いを前に進めませんか?」というのは、「仮交際から真剣交際に入りませんか?」という意味だったのです。ところが、その答えが返って来ず、はぐらかされてしまいました。
なぜ結婚相談所には、この区分があるのか。それまで全く知らなかった男女が、プロフィルを見て、「この条件の人となら、結婚が考えられる」という相手に申し込んだり、申し込まれたりして、マッチングが成立すればお見合いとなります。条件が分かっていても、人柄や結婚観は分かっていない。そこでお見合いをして、いい印象だったらお互いに「交際希望」を出し、まずは仮交際に入ります。この期間は、いわば相手の人柄や結婚観を知る期間ですから、他の人とお見合いしてもいいですし、何人と仮交際をしてもいいのです。
その中で、「この人とは結婚に向かえる」と思ったら、真剣交際に進みます。このときには、お相手に恋愛感情も育っていますし、結婚も見えてきています。真剣交際はお一人と向き合うので、他の人とのお付き合いも、お見合いもできなくなります。
ひさみさんは、なぜ答えを濁して帰っていったのでしょうか。即答できなかった理由は、いくつか考えられます。
もしかしたら、他にも仮交際をしている人がいて、しょうじさんのことを「いいな」と思っているけれど、他の人のことも「いいな」と思っているのかもしれない。また、もしかしたら、「いいな」と思ってお会いしていたけれど、4回目のデートで12時間一緒にいたら、「ちょっと違うかもしれない」という疑問が出てきてしまったのかもしれない。あるいは、もしかしたら、まだ予定されているお見合いが残っているので、今、真剣交際に入ることができないのかもしれない――。
こうした、考えられる理由をしょうじさんに話した後、私は彼に言いました。
「こちらが『真剣交際に進みましょう』と打診したのに、その答えを濁したり、先送りにしたりする女性とは、そもそもご縁がないのですよ。他にもいい人がいると、両てんびんにかけられていて、そこで選ばれてもうれしくないですよね。それに、もし他のお見合いの予定があったとしても、しょうじさんを『いいな』と思っていたら、真剣交際を申し込まれたのだから、それを受けて、決まっているお見合いはキャンセルすると思うんですよ」
すると、しょうじさんは言いました。
「僕もそう思います」
そして、1週間後には「交際終了」の連絡が、ひさみさんの相談室から来ました。
そもそもご縁のなかった2人とは思われますが、真剣交際に入るときの聞き方にもう一工夫あったら、よかったかもしれません。
それを、次の例でお話ししますね。
すごく気に入っているから、好きな気持ちを伝えたい
安田みわさん(32歳、仮名)は、吉本まさとさん(33歳、同)とお見合い後に、3回目のデートを終えて、こんな連絡を入れてきました。
「婚活して1年になりますが、今までお会いしてきた中で、初めて結婚を意識したのがまさとさんです。私、お見合い結婚と恋愛結婚はそもそも違うものだと決めつけていました。お見合い結婚はある程度、条件の折り合いがついて、『この人と結婚してもいいな』という人と結婚していくものだと思っていたんです。でも、まさとさんは、会うたびに好きになっていって、『彼を失いたくない』という気持ちも芽生えてきた。何とか結婚までうまくたどり着きたいのですが、いい方法はありませんか?」
みわさんのように、「お見合い結婚と恋愛結婚は、そもそも違うもの」と思っている人は多いのではないでしょうか。お見合い結婚は、「まあ、この人となら結婚してもうまくいくだろう」という人を選んで、気持ちはさして盛り上がっていなくても結婚していくものだ、と。
私は、みわさんに言いました。
「これは、全く違うんですよ。お見合いは出会いのきっかけです。普段の生活で家と仕事場を往復していたら、なかなかいい出会いはありませんよね。すてきな人に出会ったとしても、既婚者だったり、その人には結婚願望がなかったりするかもしれない。ならば、『結婚をしたい』と考えている異性に、サイトを通じて出会っていく。それが婚活であり、お見合いなのです。
お見合いで結婚していく人たちというのは、その相手を好きになるから結婚していくんです。ちゃんと恋愛をし、その先に結婚があるのですよ」
そして、お見合いの場合は結婚を前提にした出会いなので、相手を好きになり、相手も好きになってくださったら、もうその先には結婚しかありません。
では、好きになった相手の気持ちを手に入れるには、どうしたらいいのか。
「私は、あなたのことを好きになりました」
「あなたを愛しています」
「あなたと結婚したいです」
そんな言葉を相手に告げるのは、とてもハードルが高い。ですが、こうした直接的な言葉を使わなくても、相手に気持ちを伝えることはできるのです。
私は、みわさんに、こんなアドバイスをしました。
「例えばデートのとき、一緒に食事をしたとしたら、『まさとさんとご飯を食べていると本当に楽しいし、何でもおいしく感じちゃいます』。これだけで、“私は、まさとさんが好きです”ということが伝わりますよね」
会話の中に、うれしい、おいしい、楽しいと前向きな感情をたくさん入れて話す。これがポイントです。
「また、こんなことを言うのも効果的ですよ。『私、まさとさんといると、本当に自然体でいられるし、いつも笑顔になれるんですよ』。これも、“私は、まさとさんが好きです”というのが伝わるでしょう?」
そして、男性の気持ちを手に入れたかったら、男性にばかり金銭的負担をかけないことも大切です。
「みわさんは以前、『まさとさんは、デートの食事代は全てごちそうしてくださる』と言っていましたよね。男性が払ってくれるのが当たり前になると、全くお財布を開かなくなる女性がいます。一方で、男性の好意にただ甘えるのではなく、ちゃんと気の使える女性もいます。『次の食事代(お茶代)は、私に出させてください』とか、『この映画のチケットは、私に買わせてください』とか、さりげなく提案したり、次のデートのときに、『この間はごちそうさまでした』と、ちょっとしたお菓子を手土産に持っていったり…。
仮交際で、全くお財布を開かない女性と、男性に気を使える女性がいたとしたら、どちらが選ばれるかは分かりますよね」
さらに、彼の気持ちを確実に手に入れていくには、どうしたらいいのか。
先述のしょうじさんは、「お付き合いを前に進めませんか?」と言って、答えをうやむやにされました。これは、聞き方としては失敗です。なぜなら、相手にYESかNO、二者択一の答えを迫っているから。これでは、相手の逃げ場がなくなります。
代わりに、こう伝えてみたらどうでしょうか。
「私は、◯◯さんと一緒にいると自然体でいられるし、本当に楽しいんですよ。これからも、仲良くしてくださいね」
「これからも仲良くしてくださいね」で、「前に進めたいです」という気持ちは伝わりますし、「前に進めませんか?」と相手に答えを求めているわけではないので、相手が迷っているなら、「ありがとうございます」と言ってその場を収め、考える時間を持てるでしょう。また、もし相手も前に進めたいと思っていて、それを言い出すことができずにいたのなら、 「ああ、前に進んでいいんだ」と、背中を押してあげることにもつながります。
婚活で、「いいな」「好きだな」「結婚まで進みたいな」と思う相手に出会うこと。これは簡単なようで、実は本当に大変なことです。それこそ、目には見えないご縁です。だからこそ、そうした相手が現れたときには、確実にそのご縁を引き寄せることが大切です。
言葉にしなければ、相手に気持ちは伝わらないのだけれど、相手に答えを迫るような質問をするのは、失敗のもと。こちらが好意を持っているというのが分かる言葉を、どんどん伝えていくことが大切です。
言葉選びのセンスを、磨いてみてくださいね。
仲人・ライター 鎌田れい