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東京は細くてカワイイ子ばかり? 37歳80kg女性が「素の自分」で婚活した結果【連載】東京・居場所さがし(11)

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見た目に捉われ続けた10代

 東京の街を行く女性はみんな、かわいくておしゃれでスタイル抜群――。そんなイメージを持っている人も少なくないかもしれません。やせていることは本当に“正義”なのか。どうすれば自分に自信が持てるのか? ダイエット本のコミカライズ著書などを持つ漫画家でイラストレーターの いしいまき さんが、自身の体験に触れつつ「東京と美醜」について考えます。

※ ※ ※

 38歳、ダイエット26年選手。気づけば「ダイエット」という言葉に人生がからめとられて長い年月が経ちます。

 わたしが10代の頃は「やせている」ことこそ正義だという考えが同級生の間で蔓延していました。折しも時代はコギャルブーム。ミニスカ、ルーズソックスで東京の街を闊歩する女子高生たちが一番輝いている時代でした。

 わたしが学生時代を過ごした南日本の地方にもその影響は大きく、多くの女子(男子も)の関心事といえば自分の見た目。

 わたしは高校生のときぽっちゃりとしており、自分の見た目に自信がありませんでした。

 思春期に自分の見た目に自信がないということは、ほぼすべてのことに自信が持てないことと同義です。家族からも見た目を揶揄する言葉を投げかけられていました。

自信が欲しい。思い切って東京へ

自信が欲しい。思い切って東京へ

 思春期の吸収力は大人の数倍あると思っています。ちょっとからかわれただけでも「わたしってデブなんだ……」と思い詰めてしまうのです。

 自信メーターは地の底までマイナスでした。おしゃれに興味を持ってノースリーブを着てみても、プリクラに写った腕の太さに凹み、仲の良かった友達が内緒で合コンに行っていたことにショックを受け、「わたしはデブだから呼ばれなかったんだ……」。

 どんどん卑屈になっていってしまったのでした。

 20代の頃は彼氏が欲しくて無理なダイエットに挑戦したりもしました。しかし食べないダイエットは強烈な飢餓感に襲われリバウンド。やせたい思いとはうらはらにどんどん太っていく体。

髪を巻いたり、ピンクのワンピースを着たりしても、なんだかしっくり来なかった頃(いしいまきさん制作)

 男性からあからさまに無視されたり、美人と対応の差を見せつけられたりすると恋愛にも積極的になれませんでした。

 ダイエット本で「やせて一番良かったのは自信が持てたことです!」というのをよく見かけます。わたしはやり遂げられたんだという達成感や人からの称賛の声もあり、自信が湧いてくるのでしょう。それは素晴らしいことです。

 わたしも10代、20代の頃はその「自信」がなにより欲しかった。もしかしたらスリムな体、サラサラの髪、つるつるの肌より大きな味方になってくれるものかもしれません。

 しかし、自信がないと嘆いても息するかぎり人生は続いていくわけです。仕事のために上京してみました。婚活にトライしてみたこともありました。

いつの間にか、心にも脂肪がついていた

いつの間にか、心にも脂肪がついていた

 でも行動してみても思ったようにうまくいかない……。

 仕事も婚活も自分自身を売り出していかねばなりません。自分のことを自分でいいと思っていないのにプレゼンできません。なおさら人からいいと思ってもらうのは難しいでしょう。

 そんな日々に嫌気がさしていました。

「このまま人生を悶々と過ごすの?」「そんなの嫌だよ……」

 結婚はあきらめて、好きなことをして楽しく過ごすことにしました。もらった仕事を精一杯頑張るようにしました。

 するとほとんど知り合いのいなかった東京でも少しずつ友人ができ、楽しくて通っていたバーで思いがけない出会いがあり、37歳で結婚することができました。

 このとき体重80㎏(身長は156cm)。まさか太ったまま結婚できるなんて思ってもみませんでした。夫と出会ったときは90kg近くあったと思います。

 結婚というもの……というか自分を選んでくれる男性が現れることを半ばあきらめていたので、わたしにとっては奇跡的なできごとでした。

 そのときのわたしは本当に自然体。婚活時代はピンクのワンピースを着て髪を巻いたりもしていたのですが、夫と出会ったときは着古したフリースを着ていました。

 スリムでかわいい友達から「自然体のまきちゃんでいいんだよ。きっといい人現れるよ」と励まされていたのですが、「それはかわいい人限定の話だよ……」と反発心を覚えていました。

 きっと人の意見を遮断してしまうほど心にも脂肪がついていたのですね。

いま再びダイエットに挑戦する理由

いま再びダイエットに挑戦する理由

「自信が欲しい」「人に受け入れられたい」という思いが、「彼氏が欲しい」や「結婚したい」「だからダイエットしなきゃ」、という焦りとリンクしてしまっていた時期もあったかもしれません。

 でも今は夫と仲良く平和に暮らしています。結婚は目的ではなく、幸せな生活(生き方)への通過点でした。

そのままの自分でいてもよかった。今は平和に暮らしている(いしいまきさん制作)

 夫がほめてくれるので必要以上に自分を卑下することはなくなってきました。

 大人になって自分で環境を選べるようになったら、自分をほめてくれる人やフラットに接してくれる人の近くに行くのが大事だなと感じています。そして楽しく好きなことをして過ごすこと。幸せを人に依存しないこと。以前の自分に優しく教えてあげたいです。

 さて、結婚後のダイエットについてなのですが、夫からは「見た目のことはいいけど健康のためにやせてほしい」と言われています。

 感染が拡大しているコロナウイルスにかかると、肥満の人は重症化するリスクが高いという情報が流れてきてから言われていました。

 また、本当のデブだけが知ってることをお話しすると、足腰・かかとの負担が半端なく、普通の人よりかなり体力がないのです。

ダイエットする意味が変わった

ダイエットする意味が変わった

 標準体型の人と比べて30kgくらい重いわたしは日々大きな荷物を背負って生きてるも同然。それは体に負担かけまくりです。夫と出かけていても疲れに楽しさがかき消されることがあり、悲しい……。

 そう思い2021年からまた本気のダイエット開始! できる範囲で健康にいいものを食べ、おやつも無理に我慢せず、今のところ77kgまでやせることができました。

 何年ぶりかの70kg台です。目的がはっきりしていると清々しい気持ちで向き合うことができるのですね。

 人の目を気にしてではなく、見た目で自分に自信をつけるためでもなく、健康のため、そして自分の人生をより豊かにするために適正体重になりたい。それが、東京で暮らす今のわたしのダイエットです。

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