台湾をクルマで走っていて驚いたのが、「高速道路に料金所がないこと」と「数十mごとにオービスがあること」でした。日本に似ていて、でも数歩先を行くようなお隣の交通事情は、どのようなものでしようか。
高速道路に独自のETCを採用
台湾の主要道路や鉄道などのインフラのほとんどは、50年にわたる日本統治時代に確立されたものがベースです。そのため人々の習慣はもちろん、乗りものにまつわる環境もまた「日本的」に感じるものが今も多くありますが、一方で道路などの交通状況は、近年、日本よりも数歩先を行くシステムが複数採用されるようになりました。
特に筆者が驚いたのが、「高速道路に料金所がないこと」と「数十mごとにオービスがあること」です。
台湾の高速道路・一般道双方に、無数に設置されているオービス(2015年、松田義人撮影)。
2007年に日台双方で実施された「運転免許証相互承認制度」以来、日本人も日本の運転免許証のまま台湾でクルマやバイクの運転ができるようになりました。
この制度施行から数か月後、筆者(松田義人:ライター・編集者)はいち早く台湾でレンタカーの運転を始めましたが、この頃はまだ高速道路に有人の料金所があり、ETCはまだ普及していませんでした。
しかし2014年以降、高速道路から料金所が姿を消し、全線にわたって一般道と高速道路を自由に出入りできるようになりました。
筆者は「さすが台湾。高速道路の無料化を実施したんだな」と大喜び。好きなだけ高速道路を使いまくりましたが、レンタカーを業者にクルマを返す際に愕然。そこでは、レンタカーを利用していた間の高速道路の通行履歴が全て出力されており、その通行料を一括請求されたのです。
なぜ通行履歴が分かるかというと、2014年から台湾の高速道路とクルマのほぼ全てに独自のETCシステムが採用されたからです。
「法定速度の10%超過で感知する」オービスが信号機ごとにある
台湾のETCは、まずクルマのフロントガラスに「e-TAG」という電子シールが貼られます。
ETCなどの車載器は必要なく「e-TAG」に内蔵されたICやアンテナを介して高速道路の通行状況が瞬時に分かるというもの。高速道路上の各所から出る電波がエネルギー源となるため、クルマ側では電源すら必要のない超優れモノです。
台湾の交通事情は、日本の数歩も先を行っているように映る(2019年、松田義人撮影)。
この独自のETCを全線で採用したことで、料金所の人件費が削減されたほか、料金所付近での減速時の事故もなくなりました。
日本の高速道路の料金所に設置された、古典的とも思えるゲートバーなどに比べれば、台湾の高速道路は何歩も先を行っているように感じます。
他方、台湾の交通事情は世界的に見ても評判が悪く、交通事故の死者数の比率は、「日本の約5倍相当」と算出されたこともあります。
そのため、特にクルマやバイクの速度超過に対しては厳罰化が進んでおり、「法定速度の超過10%オーバーで感知する」とされるオービス(自動速度取締装置)が、高速道路・一般道双方に無数に設置されています。
その数は本当に多く、一般道では信号機ごとに設置されているように感じるほど。試しに台湾の主要道を走る機会があったら、その信号機付近の電柱などを見てください。少なく見ても半分以上の電柱に、カメラが車道に向かって設置されているはずです。
筆者は台湾で運転し始めた当初、台湾のオービスの存在を知らず「台湾のクルマは想像以上にノロいなぁ」とばかりに、他のクルマを追い越し走っていたところ、後日何通もの違反切符が届きました。
このときに納付した違反金は6万円強でした。台湾での交通違反は、日本の運転免許証の点数には影響しませんが、深く反省し、以来台湾では周囲のクルマを追い越さず、そして数km/hであっても絶対に法定速度を超過せずに運転するようになりました。
速度超過は特に、日本よりはるかに厳しい台湾。交通事故死者数の多さが厳罰化の理由ではあるにせよ、同時に「交通法規厳守のための取り組み」もまた日本より数歩先を行っているように感じます。