生まれたときからインターネットやスマートフォンが当たり前にある現代の子どもたちは、どのくらい本に興味を持ち、読書に時間を使っているのでしょうか? 今回は、ベネッセ教育総合研究所が行った「子どもの生活と学びに関する親子調査」の分析をもとに、小学生から高校生の子どもにおける読書習慣の実態を見ていきます。
約2万組の親子を対象にした横断調査をもとに読書の実態を分析
「子どもの生活と学びに関する親子調査」はベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所が共同で実施しているもので、2015~2022年にかけて同じ親子2万組を対象に行った7年間の追跡調査となっています。この調査結果をもとに、さらにベネッセ教育総合研究所は、子どもたちの読書行動に関するデータをまとめ、「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」を発表しました。
本記事ではその中から、今の子どもたちの読書習慣と家庭環境との関係に関するデータを中心にご紹介します。
小学生から高校生の子ども49%が平日の読書時間「0分」
まず、今の小学生から高校生までの子どもの読書時間がどのくらいかを、2022年のデータから見てみましょう。
「平日の読書時間」を聞いた結果、小学1年生から高校3年生までの子どもの49.0%が平日に読書はしない(0分)と回答しています。
また、男女別に見てみると、男子の方が女子よりも「0分」と回答した割合が多く、女子は45.1%とだったのに対し、男子は53.1%と8ポイントほどの差がみられました。平均読書時間で見ても男子は13.7分、女子は16.4分とやや女子の方が読書時間が長いという結果でした。
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
学年が上がるごとに読書時間「0分」も増加
学年別の読書時間を詳しく示したのが以下のグラフです。これを見ると学年が上がるにしたがって読書時間が「0分」の人が増えており、読書離れが進んでいる実態がよくわかります。小学1年では平日1日の読書時間を「0分」と回答した割合は25.5%ですが、中学1年生では49.7%と約半数になり、高校1年生では64.3%と6割を超え、高校3年生では69.8%と約7割に達しています。
一方、平均読書時間は小学6年生が19.2分と最も多く、次に多いのが中学1年生の17.9分でした。したがって平均時間には学年が上がることに短くなるという傾向はみられませんでした。ただし高校生になると約12分となり、一気に読書離れが顕著になるようです。
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
中学生までは成績上位者の方が読書時間が長い
では、読書時間と成績の関係はどうでしょうか? 読書時間を成績(※)と学年段階別にしたデータを見てみると、小学生、中学生では上位層ほど読書時間が長いことがわかりました。
小学1~3年生では、上位層の平均読書時間は20.2分、中位層が15.4分、下位層が11.0分。小学4~6年では上位層が22.7分、中位層が17.1分、下位層が10.9分。いずれも上位層と下位層で読書の平均時間に約2倍の差があります。
また中学生でも、上位層が18.8分だったのに対し中位層は16.3分、下位層は14.3分と、わずかながら上位層の方が平均時間が長くなっています。
その一方では、高校生になると成績による読書時間の違いはほとんど見られなくなることもわかりました。平均時間は上位層で11.6分ですが、中位層は12.6分、下位層は12.3分と、むしろ成績下位者の方が長いという結果になっています。
(※)成績は小学1年生から3年生は国・算、小学4年生は国・算・理・社、小学5年生から高校3年生は国・算・理・社・英の5段階評価を合算し、上位・中位・下位が3分の1ずつになるように分けています。
ベネッセ教育総合研究所「子どもの読書行動の実態―調査結果からわかること―」より
読書の平均時間は7年間で減少傾向
これまで、2022年のデータをもとに子どもの読書時間の実態を見てきましたが、最後に経年変化がどうなっているかをご紹介します。
2015年から2022年までの7年間の読書の平均時間の推移を示したグラフが以下です。これを見ると、小学1年生から高校3年生の子どもの読書平均時間は、2015年では18.2分ですが2022年では15.2分と、若干減少していることがわかります。大きな変化ではありませんが、この7年間で子どもの読書離れは緩やかに進んでいるようです。
この背景には、子どもへのスマートフォンの普及やSNS、動画サイトの人気なども関係していることが考えられます。
まとめ
読書離れは以前から言われていることですが、小学生から高校生までの子どもの約半数が平日、本をまったく読まないという結果には驚いた方もいるかもしれません。スマートフォンでSNSや動画を楽しむことが多く、読書に割く時間は減っているのでしょう。また、昨今は「タイパ」という言葉に表れるようにスピードや効率が重視される傾向がより顕著なので、比較的時間のかかる読書は好まれにくいのかもしれません。
読書は言葉や言語表現を覚えることに役立ったり、読解力や想像力、感性などを養うことに役立つと考えられ、生きる力を身につけるうえで大切な活動だといえます。
もっと子どもたちが本に親しむことができるためには、学校教育だけではなく各家庭での読書の習慣が大切になってくるのではないでしょうか。親子で読書を楽しむ時間を家庭で作ってみたりするのもいいかもしれませんね。
調査概要
【分析データ】
「子どもの生活と学びに関する親子調査」
調査テーマ:子どもの生活と学習に関する意識と実態(子ども調査)/保護者の子育て・教育に関する意識と実態(保護者調査)……同一の親子を対象に2015年から継続して追跡する縦断調査
調査対象:各回ともに約2万組の親子の調査モニターに依頼
調査時期:2015年~2022年の各年7~9月
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