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第35回 インテリオヤジが案内するせんべろの名店

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第35回 インテリオヤジが案内するせんべろの名店

第35回 インテリオヤジが案内するせんべろの名店

篠田節子「介護のうしろから『がん』が来た!」

介護のうしろから「がん」が来た! 第35回

 十二月にアルコールが解禁になって以来、忘年会やら役所時代の同僚とのランチ会やら親類との昼食やら、ほどほどに飲む機会があった。
 
 もう何が来ても平気、とすっかり油断していた年明けに思わぬ伏兵が現れた。
 一月五日に学生時代の仲間が新年会を企画してくれたのだ。
 上野の博物館に初詣の後、総勢二十人くらいで御徒町おかちまちのやきとん屋に。
 
 恥ずかしながら私はそれまで焼き鳥屋に入ったことはあっても、やきとん屋などというものは知らなかった。
 煙の籠もった店内の階段を上へ上へと上がり、従業員控え室の脇、冷蔵庫やら食器棚やらの置かれた広い空間に、我々グループは隔離された。老朽化した建物で威勢のいいお姉さんが仕切る、せんべろ系(千円でべろべろに酔っ払える)居酒屋だった。

 不況を背景にした低賃金の影響かデフレスパイラルか、飲食店の低価格化が止まらないが、幹事もメンバーもけっこう大きな会社の再雇用組ややはり再任用で現役を張っている大学の先生、あるいは退職金をしっかりもらって定年退職した元会社員や元公務員で、支払い能力に不安があるわけではない。そもそもせんべろに行く必要などないメンツなのだ。
 そういう男たちに限って、何を勘違いしているのか、おしゃれした女性たちが二の足を踏むような店、ビールのコンテナに腰掛けてあらゆるメニューを注文し倒しても、千円とは言わないが二千円でべろべろに酔っ払えて、帰宅した後、洋服から髪の毛までしっかり醤油と油と煙のにおいが染みついてしまうような店に連れて行きたがる。
 俺はただの社畜エリートじゃない、ただの○高○大出身の元秀才でも、ただのインテリでも、ただの名家のおぼっちゃまでもない、とでも言いたげに、スタイリッシュにせんべろをキメたがる。

 確かに料理はおいしかった。煮込んだ軟骨、得体の知れない刺身や内臓、そしてメインのやきとんまで。野菜が無いのには閉口したが同じせんべろでもファミレス系より味はよかったように思う……。
 が、鯨飲馬食の宴たけなわからさらに少し時間が経った頃、わずか一日だけの休みを確保し、新潟から無理して出てきた疲労困憊の介護娘が手洗いに立ち、そのまま籠城。ほどなくべろべろに酔っ払った私も、酒酔いとは明らかに違う気分の悪さを覚えて中座。そのまま八王子に戻った。


 一日経った翌日の夜中、お腹が張って眠れず、そのまま起きだして仕事を始め、一時間ほどして手洗いに。本来ならそこですっきりするはずが、お腹の張りが取れない。
 十分後に下痢。
 はぁ? ブータンの星無しホテルで従業員用のご飯をいただいたときも、チベットの食堂でツァンパを手づかみで食べたときも、インド辺境の市場でガイドに「自己責任ですよ」と釘を刺されながらサモサを食べたときも、お腹をこわすことなどなかった私が……。
 恐るべし御徒町。

 排泄してしまえばすっきりするだろう、とのんびり構えていたが、どうも様子が違う。
 吐き気が少々、食欲はまったく無い。鉛を飲んだような、という表現がぴったりくるような胃の重さに加え、節々が痛い。
 仕事を続けていると目の奧が痛み出した。熱を測ると38度。喉や鼻はまったく大丈夫なので風邪やインフルエンザではなさそうだ。
 おかゆもお茶も欲しくないので、白湯だけ飲んで寝る。
 その夜は、ウィーンフィルのメンバーによるディナー付き室内楽コンサートという、とてつもなく優雅な新年会が予定されていたので、何とか早く治そうと布団に潜った。ところが夕刻にかけてどんどん熱が上がってきて、無念の欠席となった。
 
 39度近い熱ではさすがに頭痛がして本も読めず、翌日も白湯を飲んで終日、うとうとして過ごす。熱は下がらず食欲はない。それでもその後下痢はないので特に医者に行くこともなく、ネットで症状を調べると、どうやらウィルス性胃腸炎の様子。世間では流行の真っ最中であることを知る。
 子供でも高齢者でもないのに、そんなものに感染するとは。なんだかんだ言って体力が落ちていたことを痛感し、不摂生を深く反省する。
 
 母の洗濯物の交換のために老健に行かなければならないが、こんな状態で介護フロアに上がりウィルスをまき散らすわけにはいかない。電話をかけて事情を話し、一階の事務室で、汚れ物と洗濯済みの衣服の交換をさせてもらうつもりだったが……。
「少々お待ちください、今、看護師と相談します」と事務担当者の返事があった。
 何の相談?
 
 数分待たされた後、「無理して来られなくてけっこうです」
 確かにエントランスや事務室であっても、ウィルスに汚染された人間にうろうろされては困るだろう。それに一階フロアにはデイサービスセンターもあるのだ。
「それでは主人に行ってもらいます」
「いえ。感染の怖れがありますからご自宅での洗濯はご遠慮いただいて、当方での業者洗濯でお願いします」
 なんとそこまで警戒されていた。
 ちなみにその後、回復してからもしばらくの間、老健へは出入り禁止となった。老健に限らず、様々な施設でインフルエンザやウィルス性胃腸炎で高齢者が亡くなるたびに話題になる。管理する側としてはこの季節はさぞ神経を使うことだろう。
 
 病気の方は白湯だけ飲んで丸二日寝ていたら、三日目の朝、突然平熱に下がり、目の裏の痛みも関節の痛みもすっかり止んだ。
 その日の深夜から翌日の午前一時頃までラジオの生番組の出演が予定されていたので、午前中にディレクターとメールでやりとりし、一応、大事をとって車でスタジオまで向かう旨を書き送った。
 しばらくして携帯に電話がかかってきた。
「今、話し合いの結果、プロデューサーの意向で今回は電話出演ということでお願いします、とのことです」
 えー、もう何ともないんですけど……という言葉は飲み込む。
 症状が無くなっても体内からウィルスがいなくなるわけではない。天下のNHKのスタジオ中にウィルスをばらまいたら、まさにテロだ。高齢者施設でなくても出入り禁止は当然の判断だった。
 その夜は、二時間近い番組を電話出演で乗り切った。本人的にも初めてのことでかなり緊張したが、アナウンサーとスタッフの方々にはたいへんご迷惑をかけた。
 病み上がりのせんべろは厳禁。年初の教訓だ。
 
 次回更新は6/19(水)です。

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