西武ホールディングスの株主総会。鉄道に関する質問は、改良が遅れている新宿線系統の話題が目立ちました。「これ以上減便しないで」との切実な声も。
玉川上水始発でもいいので「朝の拝島ライナー」を
西武新宿線の特急「小江戸」。ニューレッドアローこと10000系が使われる(画像:写真AC)。
西武ホールディングス(HD)が2022年6月22日(水)、第17回定期株主総会を埼玉県所沢市で開催しました。
株主から経営陣へ様々な質問が寄せられましたが、鉄道に関しては、池袋線に比べて改良が進んでいない新宿線系統についての質問が目立ちました。いくつかを抜粋します。
――(有料着席列車の)「拝島ライナー」を朝の上りにも設定してほしい。玉川上水から西は単線なので、玉川上水始発でも検討してほしい。
「拝島ライナーを朝に運転する計画は現時点ではありませんが、お客様のご要望を受け止め、しっかりと検討してまいります」(西武鉄道 藤井高明取締役)。
――(新宿線は)東日本大震災後に日中の列車が減便され、さらに今年の春(2022年3月)の減便で10分ヘッドが12分ヘッドになった。10分ヘッドでも少ないと思っていたが、12分ヘッドになったことで、接続時間も延びて不便になったところがある。12分ヘッドは基本としないでいただきたい。最低でも10分ヘッドに戻してほしい。
「今回はご利用状況に応じたダイヤ改正を行っています。ダイヤについては全体的なバランス考慮し検討してまいります。新宿線は連続立体交差事業を行っているので、その点でもご迷惑をおかけしています。西武新宿駅の乗り換え利便性をはじめ、価値向上に努めてまいります」(同)
――新宿線の東京メトロ東西線への乗り入れについて、昨年も質問をして、“連立を確実に推進”“価値向上”という回答で終わったのですが、乗り入れに必要な費用を算出してほしい。乗り入れができれば、中央線でなく西武新宿線を使いたい人が増えるなど、人の流れが変わり、特急を房総に運行することもできる。費用は沿線で負担できるかもしれないので、まずは乗り入れに関する費用感を出してほしい。
「都心乗り入れなどの利便性向上は、当社の課題と認識しています。(東京メトロ東西線への乗り入れは)価値向上の一つの手段です。関係先との協議も必要なので、貴重なご意見として承ります」(同)
「資産」と「運営」の分離を推進 鉄道も?
新型コロナの影響を受け、西武グループを取り巻く事業環境は厳しくなっています。そこでHDは今年、ホテルやゴルフ場、スキー場などの31施設を、シンガポールの政府系ファンドGICに売却しました。
それ以外の施設、たとえばプリンスホテルなどの資産も、新会社の西武リアルティソリューションズへ譲渡し、プリンスホテル社(現・西武・プリンスホテルズワールドワイド)はホテルの運営会社とするなど、資産と運営の分離を行いました。
これには株主から「保有と運営の分離は、顧客の声が届かない」「堤家が築き上げた資産を売却して役員報酬を取るのは看過できない」「売り食いはやめてM&Aで事業価値を高めるべき」との反対意見も出ましたが、西武HDとしては「アセットライト」(資産を軽くする)な経営環境を実現し、損益分岐点を下げることが、今後の成長につながると強調しました。
連続立体交差事業が進む東村山駅(乗りものニュース編集部撮影)。
鉄道でも近く、似たような分離が行われる見込みです。グループの近江鉄道が2024年度より「上下分離方式」に移行し、鉄道施設や車両などは沿線自治体が管理、近江鉄道は列車運行を担うようになります。
この方式が、不採算の他の鉄道、たとえば伊豆箱根鉄道駿豆線や大雄山線などにも拡大していくのか、との質問も出ましたが、伊豆箱根鉄道の伍堂文康社長はこれを否定。まずは運営の黒字化を目指すと強調しました。