鉄道車両のなかには、当初の役割を終えたのち大改造され、見違えるほど“変身”したものがあります。そのひとつが、一般的な電車から観光列車になった叡山電鉄の700系「ひえい」。楕円形の前面が特徴的です。
特徴の「楕円」は前面のほか窓や車内にも
全国各地を走る私鉄の車両のうち、改造で大きく姿を変えたものを紹介します。
近年、全国の鉄道会社で観光車両の導入が相次いでいます。2018年に登場した、京都市の北東部を走る叡山電鉄の700系電車「ひえい」も、そのひとつです。
同社は叡山本線と鞍馬線の2路線があり、このうち鞍馬線では1997(平成9)年から展望列車(観光列車)「きらら」を走らせています。これに対し「ひえい」は叡山本線用の観光列車で、既存の700系のうち、デオ730形の1両を改造して生まれました。余談ですが、形式名の「デオ」というのは、電動車の「デ」と大型車両の「オ」を意味しています。
奇抜なデザインが印象的な叡山電鉄700系電車「ひえい」(伊原 薫撮影)。
「ひえい」の特徴は、なんといってもその外観です。前面に飛び出して配置された大きな楕円(だえん)形の飾りは、実際に目にするとそのインパクトは抜群です。楕円のなかにあるふたつのヘッドライトは、沿線にある比叡山と鞍馬山を意味しており、その神秘的な雰囲気や時空を超えたダイナミズムといったイメージが楕円で表現されています。
楕円は側面の扉や窓に加え、車内の手すりなどにも採用。また、車内は通勤利用を考慮してロングシートとされたものの、ひとりあたりの座席幅が大きく広げられ、とてもゆったり座れるようになりました。窓の支柱部分にはヘッドレストが取り付けられ、その雰囲気はまるで宇宙船のようです。
「ひえい」は特別料金が不要なこともあって、まもなくデビューから2年を迎えるいまでも、高い人気を維持しています。