軽油に関しては寒冷地仕様があるとよく知られています。ではガソリンはというと実は夏用・冬用というものが実は存在しており、特にアナウンスされることもなく切り替わっています。
なぜ冬用ガソリンが?
段々と寒い季節になってきました。雪が降る頃になると、軽油で動くディーゼルエンジン搭載車に関しては、寒冷地向けの軽油を給油した方がいいと石油元売会社のホームページ上などでもアナウンスがあります。寒さで凍結してしまう可能性があるからです。
ガソリンに関してはそのようなことはありませんが、実は、夏用と冬用がこっそりと存在しているそうです。
給油のイメージ(画像:写真AC)。
ガソリンは凍る温度(凝固点)が非常に低く、-100度と言われています。これは自然界においてはまず達し得ない温度です。しかし、夏場と冬場ではガソリンの揮発性は大きく変わるのだとか。そこで、冬用のガソリンは夏用と比べ「蒸気圧」を変えているのです。
これはガソリンの揮発性を示す指標で、数値が高いほど、揮発性が高くなります。石油元売の関係者は「蒸気圧が低すぎると、気温が低い冬場に蒸発しにくくなり、エンジンの始動性が悪化してしまいます」と話します。逆に夏場に関しては蒸気圧が高すぎると、ベーパーロック(蒸気閉塞)現象がおきてしまい、アイドリングや加速性が不安定になってしまうとのことです。
前述の関係者は「JIS(日本産業規格)ではガソリンの蒸気圧について、冬用、夏用それぞれの上限値を定めており、各社はその数値内でガソリンを生産しています」と明かします。ただ、軽油の様に凍結してしまうといった大きなトラブルには直結しないため、特に注意をうながすアナウンスなどはせず、自然に切り替わっているそうです。
気になる転換期間についてですが「ガソリンスタンドによって違いますが、大体10月下旬から順次、冬用に変わっていくのが一般的です。冬用から夏用への切り替えは、例年5月ごろですね」とのことでした。
ちなみに、冬場はガソリンの消費が多くなる傾向がありますが、これはクルマが少しでも早く温まるようにエンジンが回転数を上げようと、ガソリンを多く消費するためで、冬用のガソリンに変わったのが原因というわけではないといいます。