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バリキャリの彼女に仕事がデキる恋ガタキ 裏テーマは「クズ男」のズタぼろなプライド?(生野あん子)

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吉高由里子さんが週刊誌のエース記者に扮した「知らなくていいコト」(日本テレビ系、番組ホームページから)
吉高由里子さんが週刊誌のエース記者に扮した「知らなくていいコト」(日本テレビ系、番組ホームページから)

吉高由里子さん主演の「知らなくていいコト」の最終回が、視聴率10.6%と好調でした。吉高演じる主人公、真壁ケイトが所属する「週刊イースト」は、発行部数日本一の週刊誌。「文春砲」ならぬ「イースト砲」を連発し、社会に影響を与えるジャーナリズムの先鋒です。その中で、ケイトは32歳にしてコネをあやつる人脈力、上司と部下から信頼される人間力、感動を与える文章力を兼ね備えたエース記者なのです。

仕事のできない年下彼氏が「クズすぎる」と話題に

物語の肝は、ケイトの知られざる過去が暴かれていくところにあるのですが、多くの視聴者が「何だ、こいつ!?」と注目してしまうのは、ケイトの彼氏「野中春樹」(重岡大毅)です。

野中はケイトの後輩で、新入社員の頃から交際。ベビーフェイスの可愛い男子という設定ですが、スクープを連発するケイトに比べて、今ひとつパッとしません。そんな野中が、物語が進むにつれ、だんだんとコンプレックスをこじらせていくさまが、「クズすぎる」と話題になっているのです。

ネットでは、

「野中、クズすぎ!うざい!」
「物語に1人だけガキが混じってる感じ」

などの感想が飛び交っていますが、それもそのはず。野中は第1話で、「父親が殺人犯かもしれない」というケイトの過去を知り、怖気づいて「あなたとは結婚できません」と発言。そこから、ケイトの元カレでカメラマンの尾高由一郎(柄本佑)が、ケイトの過去を知りながら交際していたことを知り、「自分は怖気づいたのに、尾高は堂々としていた」ことへのコンプレックスも募らせます。

さらに編集部に信頼され、逆境のなかでも前向きに仕事をこなすケイトに対し、いてもいなくても変わらない自分にモヤモヤする野中。そのモヤモヤを晴らすかのように、彼女の過去をライバル誌に暴露(!)して、大迷惑をかけてしまいます。

彼女を社会的に追い込むことで、少しでも優位に立とうとしたのか、それとも考えなしに「むしゃくしゃしてやった」のか。他にも野中のクズエピソードは枚挙に暇がなく、デキる彼女へのコンプレックスにさいなまれた『小物男』の切ない物語になっているのです。

そんな野中のクズっぷりが「逆にクセになる」「笑える!」と、おもしろがる視聴者もまた多いようなのです。

クズ男の一発逆転?

これが男女逆であれば、どうでしょうか――。

仕事のできる彼氏に、可愛らしい彼女という組み合わせはあまりにありふれていて、おもしろくないですよね。

やはり、いまだに「男は仕事ができてこそ、カッコいい」という価値観があるからこそ、活躍「しすぎる」彼女に嫉妬する男の物語は、共感を呼ぶのです。

「知らなくていいコト」の野中は、先輩記者であるケイトを素直に尊敬すればいいのに、学生時代は成績優秀だったプライドのせいか、それができません。さらにはケイトの元カレである尾高の「デキる男」ぶりに、コンプレックスを刺激されているせいか、どんどん暗く、ねじ曲がっていきます。

野中のプライドは、彼女ばかりでなく、彼女を通して見る「仕事のできる元カレ」にも打ち砕かれているのです。

男にも女にも嫉妬する野中を、編集長の岩井進(佐々木蔵之介)は「闇に落ちていく」と評し、「少し気持ちがわかる」と理解を示します。

「仕事のできない野中くん」を通して、バリキャリのケイトや、ケイトを支える元彼(実績も人望もあるカメラマン)、優しくて頼りになる編集長など「デキる人たち」の活躍ぶりが際立つという、ちょっと可哀想な構図でした。

ひとつ救いがあるとしたら、3月11日に放送された最終回で、野中がなんと「3年後、作家としてデビューした」というオチになっていた点でしょうか。会社員時代、ケイトに「そのドロドロした心中を小説にでもすれば」などと皮肉られていたのを真に受けて? 野中は本当に小説家になってしまったのです。

しかも、デビュー作のタイトルが「闇落ち」。会社員としてズタぼろになったプライドを「ネタ」にすることで、活路を見出したのでしょう。仕事のコンプレックスを解消するには、「環境を変える」しかないのかもしれません。まあ、中途半端な虚栄心をこじらせるくらいなら、デキる女子とはお付き合いしないほうがいいのでしょう。

「知らなくていいコト」は全話を通して、週刊誌編集部のウラ側をのぞき見しているようなおもしろさがあり、だんだんと視聴率が上がっていったのがわかる良作だったと思います。(生野あん子)


◆ 水曜ドラマ「知らなくていいコト」◆
日本テレビ系。毎週水曜日22時から。主演は吉高由里子。脚本を担当する大石静のオリジナル。週刊誌「週刊イースト」編集部で働く辣腕記者の真壁ケイト(吉高)がスクープを追う中で突き付けられる真実と向き合わなければならない心の葛藤......。動物カメラマンでケイトの元カレ、尾高由一郎役に柄本佑、ケイトとの婚約を破棄した野中春樹役に重岡大毅、週間イースト編集長の岩谷進役を佐々木蔵之介が演じている。

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