国が進める高速道路料金などの見直しについての答申案に、阪神高速の上限料金も見直すことが明記されました。首都高では2022年から先行しますが、これにより何が変わるのでしょうか。
焦点の「激変緩和措置」
国土交通省が2021年7月26日(月)、第51回目となる有識者会議「国土幹線道路部会」を開催。今後の高速道路料金施策についての中間答申の案が国交省側から発表され、意見が交わされました。
答申案では、「速やかに実現すべき料金制度のあり方」のひとつとして、大都市圏の高速道路で「激変緩和措置」として設定されている上限料金の見直しが盛り込まれました。
阪神高速でも上限料金の見直しが進む見込み(乗りものニュース編集部撮影)。
現在、首都高の上限料金は普通車で1320円に設定(オリンピック・パラリンピック期間中の1000円上乗せを除く)されていますが、1320円以上走っても料金は据え置きです。2016(平成28)年からの料金制度で「激変緩和措置」とされていたこの上限料金が、2022年4月から普通車で1950円に引き上げられます。
今回の答申案ではさらに、「首都高速に続いて、阪神高速等の料金体系についても見直しを検討」と明記されました。
なお、阪神高速の現在の料金体系も、首都高と同じく普通車で300円~1320円に設定されています。
上限料金の見直しなぜ?
2016(平成28)年以降、首都圏や近畿圏、そして2021年には中京圏でも、路線ごとに異なっていた料金体系が整理され、対距離制が基本になりました。混雑箇所などの迂回をしやすくするのが目的であり、このとき首都高や京葉道路、第三京浜など、大幅な値上げになる路線に対しては激変緩和措置が導入され、上限料金や割安な料金体系が設定されています。
上限料金について答申案では、次のように記されています。
「上限料金により、渋滞箇所を通過する料金が割安となるケースも存在している。また、上限料金を超える距離の利用に対して料金が課されないことにより、道路への損傷度合いと費用負担のバランスが崩れ、原因者負担の原則にも合致しないこととなる。こうした状況を踏まえ、大都市圏の高速道路の慢性的な渋滞の解消等に向けて、上限料金については、順次見直し、完全な対距離料金への移行を進めるべきである」
また、阪神高速以外の激変緩和措置が導入されている路線についても、「継続的にその見直しを検討すべき」とされています。
全国料金の概要。首都高や阪神高速は、高速自動車国道の大都市近郊区間の料金に揃えられた。赤矢印は激変緩和措置のある路線(画像:国土交通省)。
ただ、2022年4月から実施される首都高の上限料金の引き上げも、まだ「激変緩和」の域を脱するものではありません。たとえば北の端から南の端、さいたま市から横浜市南部まで走行した場合、本来の料金体系であれば普通車で3000円近くかかりますが、1950円で据え置きになります。「継続的に見直し」とある通り、今後のさらなる引き上げ、あるいは上限料金撤廃の可能性もありそうです。
※一部修正しました(7月28日15時45分)。