東海環状道の岐阜県内がいよいよ全通します。これまでにICが開通した山県市や大野町には、名古屋へ直通する高速バスが登場しました。それらは今どうなっていて、今後はどう展開するのでしょうか。
東海環状道の岐阜県内が全通 高速バスは?
東海環状道の山県IC-本巣IC間が2025年4月6日に、さらに本巣IC-大野神戸IC間が夏に開通し、全線の「左上」にあたる東海北陸道-名神区間が全通します。新規区間は岐阜市の近郊、鉄道が通っていない山県市や大野町といった、岐阜市から放射状に道路が延びる近郊都市どうしをつなぎます。
東海環状道の大垣西IC-養老JCT間。にしみのライナーはここを経由して大野神戸IC付近のパレットピアおおのに発着する(乗りものニュース編集部撮影)。
これら鉄道空白地帯を結ぶ東海環状道では、新たな広域交通手段として高速バスがすでに誕生しています。それが、岐阜県西部で路線バスを展開する名阪近鉄バスによる「にしみのライナー」です。
2021年7月より運行を開始した「にしみのライナー」は、大野神戸ICに近い道の駅「パレットピアおおの」に発着し、名古屋駅ハイウェイバスのりばまでを結びます。途中、東海環状道から名神を経由し大垣市(名神大垣)、安八町(安八スマートIC)にも停車します。
運行距離は約57km、パレットピアおおの-名古屋駅間の所要時間は1時間10分です。運賃は1400円。大野町や安八町では、通勤通学などのために回数券の購入助成なども行っています。
大野町にはもともと、岐阜へ通じる名鉄揖斐線が走っていましたが2005年に全廃。また安八町はもともと町内に鉄道がありません。これら地域では、東海道本線の大垣駅や穂積駅までクルマで出て名古屋方面へ向かうニーズがあるといいます。そこで、最寄りのICから名古屋まで座って直通できる高速バスを開設したと名阪近鉄バスは話します。
当初7.5往復でスタートした「にしみのライナー」は、現在、平日10往復(土休日8往復)。ただしうち2往復は大垣発着(土休日は大垣止まり1本のみ)です。
以前は海津市内から安八で「にしみのライナー」に接続する“リレーバス”の運行や、特定日のみ愛地球博記念公園(ジブリパーク)への乗り入れもありましたが、利用者僅少により2024年3月末日で廃止に。同時に運賃も1150円から現在の1400円になりました。
なお、2025年夏以降に延伸開通する大野神戸IC以北への区間延長については、予定していないとのことです。
実はもう一つあった東海環状道高速バス
東海環状道を活用した高速バスは、もう一つありました。
東海環状道の山県ICに隣接する山県バスターミナル。高速バスの乗り入れはなくなってしまった(乗りものニュース編集部撮影)。
それは、山県IC近くに整備された山県バスターミナルに発着していた名古屋への直通高速バスです。岐阜バスと名鉄バスが運行する東海北陸道経由の高速バス「名古屋関美濃線」が、土休日の1往復のみ、東海環状道を経由して山県バスターミナルまで乗り入れていました。
この乗り入れは、2021年6月に開業した山県バスターミナルの目玉であり、山県市は「名古屋まで1時間圏内のまち」になるとして定住促進に期待を寄せていました。しかし2024年7月、名古屋関美濃線の他系統とともに廃止されています。
※ ※ ※
2024年4月に実施された「にしみのライナー」の運行計画の変更や運賃値上げについて名阪近鉄バスは、「収支改善」はもとより、「運転士の拘束時間や労働時間の削減を図り、運転士不足の対策の一環」とし、運行継続のために必要不可欠なものとしていました。労働基準の見直しによる“2024年問題”の対応の一環です。
2024年問題を機に、全国で路線の整理や運行形態の変更が行われており、新規路線の開設はますます厳しくなっています。東海環状道の新規区間を活用した高速バスは、今のところ発表がありません。