退役までの秒読みが始まっている国産の大型ジェット機C-1が、特別塗装をまとって入間基地で一般公開されました。隣には同じく退役が間近のEC-1の姿も。特別塗装機にはさりげなく空自隊員のメッセージも描き込まれていました。
地元・入間では初公開だった特別塗装機
2025年3月8日、埼玉県の航空自衛隊入間基地において「基地一般開放」が実施され、普段は自由に立ち入れない自衛隊基地に多くの一般人が訪れました。
2025年3月8日のイベントではC-1の特別塗装機とEC-1が並べて展示され、その前には多くの来場者が詰めかけていた(布留川 司撮影)。
今回は、一部の基地とエプロン地区が開放され、そこでは同基地で運用している国産輸送機C-1とその派生機である電子戦訓練機EC-1が展示されました。これら2機は、実際にエンジンをかけて滑走路を高速滑走するシミュレーション・テイクオフも実施し、来場者は眼前で実際に機体が動く姿を見ることができました。
また、イベント中には入間基地の有志隊員で作る和太鼓部である入間修武太鼓の演奏会も行われましたが、今年が同部の創部30周年記念を迎えたということで、他の地域の和太鼓部も参加した合同演奏会として規模の大きいものとなっていました。
今回の一般開放で航空機ファンの注目を最も集めていたのは、特別塗装が施された「28-1002」号機でしょう。同機にはフェニックス(不死鳥)をモチーフにした図柄が塗装され、通常の緑、茶、ベージュの3色迷彩とは異なるド派手で鮮やかな塗装をまとっていました。
入間基地では、かねてより公式SNSでその存在を大々的にアピールしており、3月2日には愛知県の小牧基地航空祭に参加し、その他に全国の航空自衛隊の基地を回るツアーも実施。その姿を撮影した全国の飛行機ファンも、SNSに写真や動画を投稿しています。
地元の入間基地で特別塗装機が一般公開されたのは今回が初めてで、多くの来場者がその姿を愛でるとともに、スマートフォンやカメラで撮影して記念に残していました。
不死鳥だけじゃない! 記念塗装に込められた意味とは?
そもそも、この記念塗装機が用意された理由は何でしょうか。それは、C-1の退役が近づいているためです。
会場に置かれた通常塗装のC-1輸送機。手前の機体は後部のカーゴドアを開けて機内も見られるように展示されていた(布留川 司撮影)。
同機は国産初の大型ジェット機として開発され、全部で31機が生産されて航空自衛隊で半世紀以上、運用されてきました。しかし、長年の運用による老朽化のため、順次退役が進められています。現在運用されているのは、入間基地の数機と、岐阜基地で試験機として用いられている試作1号機のみです。今回の一般開放では会場に3機のC-1が留め置かれていましたが、おそらくはこれが現時点で入間基地に残るすべてのC-1だと思われます。
航空機としての役目を終えつつあるC-1ですが、その50年以上にわたる運用の歴史は決して軽いものではなく、不死鳥であるフェニックスをモチーフにした記念塗装機が用意されたのは、その功績を後世に伝えたいという想いが込められているのでしょう。
フェニックスの模様は機体の前半部分に塗装されていますが、記念塗装の図柄はこれ以外にもあります。左側の胴体側面には「C-1 FOREVER(永遠に!)」の文字と、入間基地の第2輸送航空隊の鷲のマークが入れられています。
垂直尾翼には、風になびく桜吹雪が描かれています。その枚数は51枚で、C-1が51年間運用されたことを象徴しています。また、そのうちの1枚には、非常に小さな文字が書かれています。左側には「I love C-1」、右側には「Thank You C-1」と、それぞれ異なるメッセージが記されています。
このように、記念塗装の随所に施された図柄には、それぞれ意味が込められています。これは、機体を準備した航空自衛隊の隊員たちの強い想いの表れともいえるでしょう。
まもなく全機退役をむかえる予定のC-1輸送機。岐阜に残る銀色のC-1ともども、元気よく空を飛ぶ姿が見られるのは、あと僅かです。