バイトAKB(アイドルグループ、AKB48の派生ユニット)元メンバーで、現在はラーメン店などを経営する梅沢愛優香(うめざわ・まゆか)さんが9月24日、「ラーメン評論家の入店お断りします」とツイッターに投稿し、ネット上で話題となりました。
投稿の理由について、梅沢さんはテレビ番組などで「多くのラーメン評論家が、私に対してセクハラや中傷、嫌がらせをしてきた」と説明しましたが、梅沢さんからセクハラを仮名で指摘されたフードジャーナリストのはんつ遠藤氏が自ら名乗り出て、ブログで反論するなど騒動が収まりません。梅沢さんは10月18日、はんつ氏を提訴するとツイッターで明らかにしました。
そもそも、飲食店にとって、評論家とはどのような存在なのでしょうか。また、評論家が料理や店のサービスを不当に酷評する、あるいは誹謗(ひぼう)中傷ともとれる発言をした場合、店の経営にどのような影響を与えるのでしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。
“もろ刃の剣”としての評論家
Q.飲食店にとって、「評論家」とはどのような存在なのでしょうか。
成田さん「『ラーメン評論家』『カレー評論家』など飲食の評論家になるために必要な資格やルールはないので、誰でも自由に『評論家』と名乗ることができます。従って、評論家は基本的に一般客と同じ立場であり、店にとっては客の一人であることに変わりありません。
飲食サイトの口コミからも分かるように、個人ごとに食の好みが異なる以上、全ての評論家がその店の味を気に入るとは限らないでしょう。しかし、テレビやグルメ雑誌によく登場する評論家が飲食店を評価したときの影響力は非常に大きく、その評論家の言葉一つで人気店になったり、客が来なくなったりすることは実際によくあります。影響力のある評論家は飲食店にとって“もろ刃の剣”になり得るでしょう」
Q.では、テレビや雑誌によく登場する評論家が料理や店のサービスを不当に酷評する、あるいは誹謗中傷ともとれる発言をした場合の影響は。
成田さん「評論家の記事や評価を参考にして、飲食店を選ぶ人は非常に多いです。特に著名な評論家がテレビや雑誌で特定の店を不当に酷評したり、誹謗中傷したりすれば、そのことを信じてしまう人もいるので、少なからず、客足は鈍るでしょう」
Q.テレビや雑誌で中傷するほかに、評論家が飲食店を困らせるケースとして悪質なものは。
成田さん「当社のクライアントから実際によく聞く話としては、趣味で飲食サイトに書き込みなどをする一般の評論家が割引やサービスのほか、スタッフの連絡先の提供を店に強要するケースです。店側がこれらの提供を断ると、後日、飲食サイトで酷評されたり、評価を落とされたりしています」
Q.元アイドルの梅沢愛優香さんのように、評論家からの中傷や嫌がらせに悩み、「ラーメン評論家の入店お断りします」と公表した店も登場しています。悪質な評論家の入店を拒否する行為は店の経営を守る上で、やむを得ないことなのでしょうか。
成田さん「先述のように、評論家と名乗っても、店の客であることに変わりありません。客が店を選ぶのと同じように店も客を選ぶ権利があります。女性限定の店や会員制の店があるように、特定の客の入店を断るかどうかは経営者が判断することであり、梅沢さんの対応は問題ないといえます。今回のケースでは、著名人がラーメン店を経営しているということで、騒ぎがより大きくなっています。梅沢さんがこの一件を乗り越えていけるかどうかは、評論家以外の一般客の評価次第だと思います」
Q.悪質な評論家に対して、飲食店はどのように対処すべきなのでしょうか。また、飲食店が日頃から心掛けるべきことは。
成田さん「悪質な評論家への対応はメリットだけでなく、デメリットも多く、店の経営方針によっても違いがあります。困ったときは飲食店の専門コンサルタントなどに相談するとよいでしょう。ただし、前提として、飲食店は悪質な評論家を含め、全ての来店客に評価されます。
先述のように、味の好みは人によって『合う、合わない』がありますが、店のサービスについては店側の努力次第で『接客サービスがとてもよかった!』『居心地のよい雰囲気だった!』など、客から高い評価を得ることも可能です。飲食店の評価は『料理の味』だけでは決まりません。すべてのお客さまに好印象を持ってもらえるように、飲食店は常に努力を欠かさないことが大事です」
オトナンサー編集部