歯の健康を守るために欠かせない「歯ブラシ」。1日に数回、毎日使うため、少しずつブラシの毛が傷んでいくものですが、交換のタイミングや頻度について迷う人もいるのではないでしょうか。ネット上では「つい交換するのを忘れてしまう」「毛が明らかに開いたら交換しているけど遅いかな」「磨き心地が悪くなるまで使っている」など、交換タイミングは人によってさまざまなようです。
お口のトラブルを防ぐためにも知っておきたい、歯ブラシの交換タイミングについて、こどもと女性の歯科クリニック(東京都港区)院長で歯科医師の岡井有子さんに聞きました。
1カ月に1回は交換を
Q.歯ブラシの適切な交換のタイミング・頻度はどれくらいでしょうか。
岡井さん「歯ブラシの交換時期は基本的に、1カ月に1度程度です。歯ブラシを選ぶ目安として、(1)毛がたくさん植わっている(2)毛にコシがある(3)子ども用であれば、毛が短い。大人用であれば、子ども用の2倍程度の毛の長さである(4)硬めの毛が植わっていること――が挙げられます。歯磨きには、硬めでコシのある毛が適しているので、コシがなくなってくると清掃性が悪くなります。
歯ブラシの毛が広がって、柄の幅からはみ出しているようなら、1カ月たっていなくても交換時期だと考えましょう。歯科医師から見ると、1カ月より、もっと短いスパンで歯ブラシを交換している人はとてもきれいに歯を磨けている印象があります」
Q.適切な交換タイミングを過ぎた歯ブラシをそのまま使い続けると、歯や歯茎にどのような影響があると考えられますか。
岡井さん「虫歯や歯周病を予防するために最も大切なケアは、ご自宅での歯磨きです。交換時期を過ぎた歯ブラシを使い続けると当然ながら、虫歯や歯周病のリスクが高まります。本来、適切な時期に交換した歯ブラシを使っていれば、歯と歯茎の境目がしっかり磨けますが、毛が広がった軟らかい歯ブラシだと、歯と歯茎の境目が全く磨けなくなります。それにより、歯周病や虫歯のリスクが大幅に高まるのです」
Q.歯ブラシの交換頻度には、毛の硬さ(かたい、ふつう、やわらかい)による違いはみられるのでしょうか。
岡井さん「『かたい』ものは汚れが落ちやすい一方で、歯と歯茎の境目を磨くと知覚過敏になりやすいです。『ふつう』のものは『かたい』ものに比べて汚れが落ちにくいのですが、歯と歯茎の境目を磨くのには適しています。『やわらかい』ものは汚れが落ちにくいものの、歯茎のマッサージには効果的といえます。
毛が軟らかいタイプの歯ブラシの方が傷みやすく、交換頻度も高くなります。ちなみに、私は硬めの歯ブラシで歯と歯の間を磨き、普通の硬さの歯ブラシで歯茎の際を磨くことをおすすめしています」
Q.「歯ブラシを毎回、丁寧に洗っているから、そんなに傷んでいない」という場合も、やはり、先述の適切なタイミングで交換すべきでしょうか。あるいは、丁寧に扱えば、使用期間を延ばせることもあるのでしょうか。
岡井さん「たとえ、丁寧に洗っても歯ブラシの毛は傷みます。また、細菌が繁殖する可能性もあるので、やはり、最低でも1カ月程度での交換をおすすめします」
Q.あまり長く使っていないのに歯ブラシがすぐ傷んでしまう場合、その理由としてどのようなことが考えられますか。
岡井さん「歯磨き時の力の強さに問題があるのだと考えられます。適切な力の強さは、爪の生え際に歯ブラシを当てたときに痛くない程度です。ペングリップで持つのが正しい持ち方です。歯ブラシがいつもすぐに傷むという人は、磨くときの力の入れ方や歯ブラシの持ち方を見直してみましょう」
オトナンサー編集部