「ただいま」と玄関のドアをあけたとき、そこは自分にとって本当に“安らげる場所”なのでしょうか。「どうせ寝に帰るだけだから」と日当たりをあきらめていたり、料理は好きだけれど単身用マンションでは一口コンロのキッチンが当たり前だったり……。
「玄関を開けてすぐにキッチンとベッドがある、小さな7畳の賃貸マンションにちょっとだけ気がめいっちゃって」。そう話してくれたのは、31歳でマンション購入に至ったまひるさん 。現在は新宿区の1LDKにおひとり住まいです。
彼女はなぜ、「マンションを買う」という決断をしたのでしょうか。お部屋へ実際にお邪魔し、ご案内いただきながらお話を伺いました。
■購入の安心感が背中を押した。築60年超の中古物件とのめぐり逢い
まひるさんは東京のご出身。ご実家は後楽園にあり、就職後もしばらくはご実家から通勤をされていたそう。ご実家を出て一人暮らしを始めたのは26歳のころ。「新卒のころと違って仕事も慣れてきたし、そろそろ実家を出てもいいかなと思って」と、ご実家からもほど近い谷中のワンルームマンションで新生活をスタートしました。
まひるさんの趣味は料理。特に当時はベーグルづくりがお好きだったそうですが、賃貸マンションのキッチンは一口コンロで、作業台も小さく、不便さを感じていたといいます。「キッチンの大きいおうちに引っ越そう」。そう決めた彼女はまず、賃貸か購入かで迷ったと話します。
「賃貸で住み替えてもよかったんですけど、この先ずっと10万円前後の家賃を支払い続けることに不安を感じていたころでした。けれどマンションを購入すれば、自分の資産になりますし、途中でライフステージが変わっても、立地が良ければ売却も賃貸に回すこともできます。その安心感に惹かれ、『購入で考えよう』と物件探しを始めました」
物件探しはご実家からあまり離れない場所でと、当時住んでいた谷中で探しはじめたものの、よい物件には出会えませんでした。その頃から、自分の理想の家を叶えるためには、築古の安い物件をリノベーションするしかないと思い始めたそう。その後少し範囲を広げ、見つけたのは神楽坂の物件。
「すごく気に入った物件だったんです。でも、タッチの差でほかの方に購入されてしまって……。当時は相当落ち込みましたし、もう購入もやめようかと思ったくらい。でも根気強く探して、見つけたのがここ、新宿区築60年超のマンションでした」
用意できる予算を考えると、築40年以上の築古マンションが候補だったそう。“古さ”の心配はなかったのかと伺うと「あまり外観は気にしないんです。リノベーションで中がキレイになることはわかっていましたから」と笑顔のまひるさん。
こうして新宿区のマンションを購入した彼女は、リノベーションに取り掛かっていきます。
■メリハリをつけて予算内に。納得ができるリノベーションができた
物件購入をはじめ、リノベーションを手掛けたのはリノベーション総合事業を手掛ける『グローバルベイス』。インスタグラムをとおして、グローバルベイスを知ったのだそう。
「グローバルベイスは単身女性の購入事例もたくさん掲載されていましたし、なにより私は物件購入+リノベーションが第一条件。リノベーションに強い会社さんにお手伝いいただけたら心強いなと考え、お願いしました」
とはいえ、築60年超の築古マンション。リノベーション前は狭く区切られた2DKの間取りで、バスルームは浴槽がなく、古いシャワーが1つ付いている状態でした。まずまひるさんがこだわったのはキッチン。以前からこだわりたかったというキッチンは、賃貸ではあまり見かけない窓に向いた「外向き」のアイランド型です。
「賃貸のキッチンって、壁付きだったり、アイランドでもリビングを向いていたりすることが多いですよね。でもこの部屋は南向きだからとても日当たりがよくて、外を見ながら料理をしたいなと、グローバルベイスさんとすり合わせてこの形になりました」
また、限られたスペースを有効活用するためにも、「ダイニングテーブルは置きたくなかった」というまひるさん。キッチンの対面に、作り付けのL字型テーブルを設置し、カップボード兼ダイニングテーブルとして活用しています。このおかげでリビング部分が広々ととれ、大きなソファをリビングの真ん中に設置することができました。
たっぷりとこだわったキッチンに対して、こだわらない部分も作ったのがまひるさん的リノベーションのポイント。例えばお風呂場には鏡を設置しなかったり、外廊下に面した寝室の窓枠は、古く痛んで交換が必要でしたが、窓部分を壁で塞いだり。
「こだわる部分とこだわらない部分でメリハリをつけたから、リノベーション費用も予算内に収まりました。リビングとベッドルームを仕切っているこのガラス窓は、リノベ前の窓枠を再利用したもの。これもグローバルベイスさんの設計士さんが提案してくれました。予算を抑えながら、モダンな印象に仕上げていただいて、とても気に入っています」
もうひとつ、こだわったのがインテリア。お部屋はすっきりとモノが少なく、趣味だというグリーンがちりばめられています。
「自分で全部やると、モノがあふれかえってしまうとわかっていたので(笑)。それならとコーディネーターさんに依頼し、フルコーディネートしていただきました。家具の購入まで代行してもらえる方にお願いして、とても納得のいく居心地の良い空間づくりができました。プロの力はちゃんと借りるべきだなって思いましたね」
■迷っているなら、したほうがいい。
こうしてひととおりお部屋をご紹介いただいたのち、少し疑問に思うことがありました。それは「月々のローンの支払いは大変なのでは?」というところ。まひるさんの用意した予算は約3500万円。頭金のないフルローンをご希望でした。
「物件は築古を選び抜いて、約2500万円。リノベ費用は約1000万円です。35年のフルローンを組むと、月々の支払は約9万円。マンションの管理費などを合わせても、月々の支払は12万円弱です。この周辺の賃貸で同じレベルの物件を借りると15万円は下りません。『購入した方が安い』は本当なんですよ(笑)」
実際にマンションを購入し、入居されたのは2020年10月のこと。約3年この部屋で過ごしているたまひるさんは「『購入』を選んで本当によかった」と振り返ります。
「この部屋に帰ってくることが毎日とても楽しみなんです。疲れて帰ってくるときに、狭いワンルームに帰宅するのと、好きなものに囲まれ広々とした空間に帰ってくるのでは全然違いますね」
最後にまひるさんに「もし購入か賃貸かで迷っている人がいたら?」と聞くと……その答えは「しようかな、ならした方がいいです」というもの。
「女性がひとりで家を買うって、悪いことじゃないです。暮らしの質も上がるし、将来自分の財産になる。迷っているなら、自信をもって一歩踏み出してみてほしい。きっと自分が思っているよりはるかに楽しい暮らしがまっているはずです」
(取材・文:山口真央、撮影:大嶋千尋)