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死にたい気持ちを思いとどまらせた「セラピストとの約束」

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死にたい気持ちを思いとどまらせた「セラピストとの約束」
死にたい気持ちを思いとどまらせた「セラピストとの約束」
私たちは癒されたい ~「女風」に通う女たち~

女風で味わった「陽だまりのようなあったかい」空間

 里美さんが三回目にセラピストと会ったのは漫画喫茶だ。性感を求めない里美さんは必ずしもラブホテルに行く必要はない。だから会う場所は満喫で十分なのだ。
 黒のボックスシートにセラピストと二人きり。セラピストは、立膝して背もたれを作ってくれた。骨ばった膝に体を預けてもたれかかって漫画を読んでいると、とてつもなく「あったかい」ものに包まれているような気がした。

「人と一緒にいて温かさを感じたのは、その時が初めてですね。まるで日なたぼっこしているような温かさでした。二人で密着していると、彼の心臓の鼓動が伝わってきて、すごく心地いいんです。これまで一人がいいと思って生きてきたのに、誰かと一緒にいたときのほうがあったかかった。気がつくと、ウトウトして寝落ちしていたんです」 

 陽だまりの中にいるようなじんわりとした温もりに、心が安らいだ。幼少期に幼馴染と野原を走り回って疲れ果てまどろむ感覚――。気がつくと、狭いボックスシートの中で思わず寝息を立てていた。
「私」を掴んで離さない拘束具のような現実、そこから束の間でも「解放」される瞬間。それは、世の女性たちが望んでやまない時間だ。
 セラピストの作り出す「あったかい」空間に抱かれること――、それはもしかして、自分で自分を抱きしめ慈しむ行為なのかもしれない、私はそう直感した。
 その後も里美さんはセラピストとDMを交わし、会社を退職する決断を下した。最後は自分自身で考え抜いてのことだった。

自分を満足させてあげられるのは自分しかいない

 目の前でコーヒーを口にしている里美さんは、心なしか晴れ晴れとした表情をしているような気がする。里美さんはコーヒーに目を落としながら当時の心境を振り返る。

「あんパンって上から押せば、横からあんこがはみ出るじゃないですか。それと一緒で当時の私は仕事をしすぎて、病気でよく倒れてたと思うんですよ。行き場のない不満を抑え込んで我慢をしていたら、その我慢を誰かにぶつけるか、自分が潰れると思うんですよね。
だけどよく考えたら自分を満足させてあげられるのって自分しかいない。そのためには、女風を利用したっていいって感じる。女性は全然気負う必要なんてないと思うんです」

 降りやまぬ雨を見つめる里美さんに、私はこれだけは聞いておきたいと思っていたことを尋ねた。
 ――里美さんにとって、セラピストってどんな存在?
 そんな私の問いに、里美さんは即答する。

「んー、風俗の人ですね」
 
 私はその答えに少しだけ驚いた。それだけ「あったかい」空間を提供してくれるセラピストだからこそ、きっと恋心のようなものを抱いているに違いないと私が勝手に想像していたからだ。しかし、里美さんにとってあくまでセラピストは「風俗の人」で、彼氏彼女の関係を望むことはないし、将来結婚したいわけでもないという。里美さんは、セラピストにとって特別な存在になりたいという願望はないのだ。
 里美さんはそんな私の戸惑いを知ってか、言葉を続けた。

「私、ずっと一人で立ちたいと思ってたんですよ。だけど、一人で立つのもつらいときもあるじゃないですか――」

 里美さんのまっすぐな視線が私をとらえる。里美さんの言う通り、一人で立たなきゃと思っても、それがすごく苦しいときがある。そして逆説的なようだが、一人で立つためにこそ、切実に他者に寄りかかりたいときもある。
 私は、以前インタビューで女風のセラピストが喋った言葉を思い出していた。彼は、私に自分たちは「止まり木」のような位置づけがいいと言った。きっと人が生きていくうえで、人生には止まり木が必要なのだ。女風とは、社会を疾走し続けることに疲れた女性たちが、しばし羽を休めに帰ってくる場所なのかもしれない。

「約束」があるからまだ死ねない

 気がつくと3時間が経過し、手元のコーヒーはいつしか空っぽになっている。店主の老夫婦に目をやると、仲良く店内のテレビに見入っているようだ。雨は止みそうになく、漆黒のコンクリートを叩き付け、激しさを増している。窓の外では勢いを増す雨風に揺れる桜の木が、薄ピンク色の花びらを容赦なく散らしている。私たちは、雨に濡れて錐もみ状態で落ちてゆく、はかなげな桜の最後をぼんやり見届けていた。里美さんはゆっくりと、重い口を開いた。

「実は去年の年末、どうしようもなくこの世から消えたいと思ったことがあるんですよ。だけど、セラピさんとの約束があるから、まだ死ねないなぁって思い直したんです」

 里美さんは、そう言って窓に張り付いた花びらを見つめた。私はあえて深くその理由は聞かなかった。長い人生を生きていれば、誰だって気持ちがどん底に陥ることもある。里美さんはとにかく苦しくてたまらなくなった。無性に人生を投げ出し、フェードアウトしたい衝動が、襲ったのだ。だけどそのとき、ふと、セラピストとの約束が脳裏を過ったという。

「その時、私セラピさんと会う約束をしていたんだ、そういえば、予約を入れてあったんだって、ふと思い出したんですよね。前から日にちを空けてもらってるのに、申し訳ないなと現実に引き戻されたんです。それで死ぬことを止めるきっかけになったんですよ」

 思い直せば、セラピストとはこれからまだまだやりたいことがある。いつか夏にパジャマを着たままプールにダイブしたいし、水風船の戦いもしたい。節分の日には豆まきだってしたいし、クリスマスにコスプレするのもいいな。
 そんなことを考えていると、私、まだ頑張れる。もう少し生きていようと思えたのだという。

写真:photoAC写真:photoAC

寄りかかれる「誰か」でいてもらうこと

 私はそんな里美さんの告白に黙って耳を澄ませていた。とても深刻な話なのに、里美さんのパジャマを着たままプールにダイブというプランを聞いて、思わず噴き出してしまった。目の前の里美さんもそんな私の反応がおかしかったのか、ケタケタと笑っている。
 止まる場所がないまま羽を動かし続ける鳥は、いつかは息切れして墜落する。だからこそ、私たちはときに寄りかかれる「誰か」を求める。そんな「誰か」とのささやかな未来を思い描くことが、実は人々が日々生きている意味だったりもする。

「だから私の命を繋いでくれたセラピストさんにはすごく感謝してるんです。良いお客さんが付いてくれると私もすごく嬉しいんですよ。他のお客さんに嫉妬なんて感情はないですね。彼が大将で私が背中を守るから、前だけ見て戦ってねと思っています。とはいっても私自身、足場はそんなに固まっていないんですけどね」

 そういって、里美さんははにかむ。「一風」変わった里美さんの物語も、終わりが近づいてきたようだ。
 どうやら今日は一日中、雨は止まないらしい。私たちは傘を差し、夕闇が迫る喫茶店を後にした。駅に向かう帰りの道すがら、里美さんは印象的な話をしてくれた。

「セラピストさんとはお互いが歳を取っても長年、茶飲み友達として笑い合えたらいいねってよく話すんです。私たち、おじいちゃんおばあちゃんにもなってもお互い元気で、ピンピンコロリ仲間でいようねって。このまったり感は還暦夫婦みたいだから、すぐ棺桶に直行レベルだねってよく冗談を言い合ってます」

 里美さんはそう語ると声を出して笑った。里美さんの生き生きとした表情を見ていると、私まで、どこか心が浄化される気がした。
 里美さんが女風で欲しかったのは、めくるめく快感を与えてくれる相手でもなく、ハッと胸がときめくようなイケメンでもなかった。
 辛いときも楽しいときも寄り添ってくれて、くだらないことで笑い合い、自分の人生を見守ってくれる「あったかい」存在である。里美さんはそんなかけがえのない「絆」を築ける相手を奇しくも女風で見つけた。
 もしかしたら、それこそが現代人が最も欲してやまない関係性なのではないだろうか。ザアザアと降りしきる雨の中、小さくなる里美さんの後姿を見送りながら、ふとそんなことが頭をかすめた。

次回は6/19(日)公開予定です。
前編「ブラック企業の人間関係に疲れ果て……40代女性が女性用風俗に縋った切実な理由」はこちら。

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