「絶対に結婚してはいけない男」とは、どんなタイプだと思いますか。何はともあれ「キレやすい人」だと思います。現在、あおり運転が社会問題になっていますが、あおり運転をしたり、あおられたからといって逆上してあおり返したり、さらに、相手に危害を加えたりするような人は、皆「キレやすい人」。キレた時点で、正常な判断ができなくなっているのです。
「26年間、キレる夫に我慢してきました」
先日、吉田芙美子さん(50歳、仮名)が、婚活相談にやってきました。
「先月、26年連れ添った夫との離婚が成立しました。我慢に我慢を重ねた結婚生活でした。上のお姉ちゃんは既に社会人、下の妹も今年の春に大学を卒業して就職できたので、やっと離婚の決断ができました」
26年もの間、何をそんなに我慢してきたかというと、夫がささいなことでキレる人だったから。それに耐えてきたのは、シングルマザーになって経済的に困窮するよりも、自分が我慢することで、子どもの教育にはちゃんとお金をかけてあげたかったからだといいます。
「夫は私の言動にはキレるのですが、娘たちのことは猫かわいがりで、たとえ娘たちの言動でキレたとしても、罵詈(ばり)雑言のターゲットは私なんです。だから『私が我慢すれば』と思ってしまったんですね」
「ボケ!」「この役立たず」「この世から消えろ」「俺をこんなに怒らせやがって、どうしてくれる」。26年間、浴びせられた罵詈雑言は数知れず…。
しかし、キレやすい性格さえ除けば「ギャンブルはやらない」「お酒はたしなむ程度」「女性関係には無縁」という、真面目を絵に描いたような人。会社も一部上場企業で給料も安定していたし、高給取りでした。
では、どんなことでキレるのでしょうか。
「それは、もう本当にささいなことなんですよ。例えば、夫が会社に行く前に食べる翌朝のパンを私が買い忘れたとか、日曜日は18時にご飯を食べるのが習慣なのに、18時までにテーブルに食事が並んでいなかったとか。自分の中で決めているルールがあって、それを私が守らないとその瞬間にキレるんです」
あおり運転の常習者であったともいいます。
「とにかく『自分ルール』の人なので、狭い道で幅寄せされたり、割り込み運転をされたりしたら大変でした。『チッ』と舌打ちをしたり、『ウリャー!』と大声を上げて同じことをやり返したりする。いったんキレると怒りがどんどん増幅していって、もう止まらなくなるんです」
さらに、芙美子さんはこんなことも言いました。
「キレやすい男性と暮らしていて学んだのは『キレる人って、そういう思考回路なんだ』ということです。もう、そういう脳の作りというのでしょうか。普通の人は『ここでキレたら、後でどうなるか』『悔しいけれど、常識のない相手とけんかしてもしょうがない』とか思うでしょ? そういう先読みの思考回路がない。怒ると、瞬間湯沸かし器のように沸騰して、怒りの感情を抑え込むことができなくなるんです」
そんなご主人と離婚して、やっと穏やかな生活を手に入れた芙美子さんですが、「やはり1人で暮らしていくのは寂しい」と思い、再婚を決意したようです。
「子どもたちが独立した今、これからは自分の身の振り方は自分で考えていかないと。私が朝のパンを買い忘れたくらいでキレる人ではなく、私の失敗も笑って許してくれるような穏やかな男性を探そうと思います」
今や「人生100年時代」といわれるようになり、50代、60代、70代での初婚、再婚者も増えています。芙美子さんの第二の人生が始まります。
男友達からかかってきた電話にキレて…
「最近、婚約破棄をした」という工藤春江さん(36歳、仮名)が入会面談にやってきました。大手相談所で出会った吉田剛司さん(36歳、仮名)と婚約し、成婚退会したのですが、先月、その婚約を解消したのだといいます。
「前の結婚相談所では、約2年間活動していました。ですがお見合い後、交際には入ってもまめに連絡をくださる方が少なくて。1週間に1回、2週間に1回程度の連絡だと、こちらのテンションも下がってしまう。私から積極的にLINEを入れても、レスポンスが来るのは3、4日後。『この人は本当に結婚相手を探しているのかな』『それとも、私に魅力がないのかな』と考えてしまうことが多かった。そんなときに、剛司さんに出会ったんです」
剛司さんは、とにかくまめだったといいます。
「LINEは、ほぼ毎日来ました。あと、デートのときに、私には一切お金を使わせないし、とても紳士的な方だったんです。そんな人は初めてだったので、5回目のデートで真剣交際に入り、あっという間に結婚を決めてしまいました」
プロポーズは、夜景のきれいなレストラン。「記念に」と、ダイヤのネックレスもプレゼントしてもらいました。
「あのときは夢心地でしたね。こんなに幸せでいいのかしらって」
ところが、結婚相談所を成婚退会した後から、だんだん彼の違う一面が見えてくるようになったというのです。
「ちょっとしたことでイライラする人だな、怒りやすい人だなというのは、お付き合いを始めた当初から感じていたんです。ただ、付き合いも浅かったので『仕事でストレスをためているのかな。結婚したら私が彼に寄り添って、穏やかな生活を2人で築いていったら、イライラすることもなくなるだろうな』と思っていたんです」
そして、婚約してからは、お互いの一人暮らしの家を行き来するようにもなりました。
「あるとき、彼の家で2人で夕食を食べていたら、大学時代のゼミで一緒だった男友達から電話がかかってきたんです。気が置けない仲間で、私のことを『ハル』と呼んでいた。その彼の声が、携帯から漏れたんだと思うんです」
男性からの電話。しかも、その男は自分の婚約者を、まるで彼女のように「ハル」と呼び捨て。春江さんが電話で話していると、剛司さんが箸を下ろしながら、「バンッ!」と勢いよくテーブルをたたいたそうです。
「その音に、まずびっくりしました。そして、もっとびっくりしたのは、顔が鬼の形相になっていたんです。話していた電話を『ごめんね。またかけるね』と切ったんですね。そうしたら『またかけるだあ? 俺のいないところでコソコソ話すのか、オリャ?!』って、自分が食べていたパスタのお皿を手で払いのけ、トマトソースとパスタが床にぶちまけられました」
そこからはもう怒りが収まらず、椅子を蹴り倒したり、クッションを壁に向かって投げたりと、大暴れ。部屋の中がめちゃくちゃになってしまったそうです。
「私の父は声を荒らげて怒るような人ではなかったので、最初は怖くて恐ろしくて、体が固まって動けなくなりました。でも、このままいたら殺されるかもしれないと思って、持ってきたバッグをつかんで玄関に向かったんです。前をふさがれて出られないようにされましたけど、こっちも必死ですから、力任せに彼を押しのけて逃げ帰ってきました」
その夜の出来事を両親に言うと、両親は結婚に大反対。春江さんも、彼の鬼の形相と暴れている姿が脳裏から離れず、婚約解消に至ったといいます。
キレる人=自分ルールで生きている人
キレる男性は、キレて暴れた後には猛省します。「この性格は何とか直していくから、そばにいてほしい」「俺にはお前しかいない」「好きだから、余計に頭に来てしまった。普通ならこんなふうに怒らない」などと、反省と女性への愛情を示す言葉を次から次へと口にするかもしれません。
しかし、芙美子さんも言っていたように、「キレる人」というのは、自分が一番正しいと思っている「自分ルール」で生きている人がとても多い。そして、そもそも、そういう思考回路なのです。
「俺をこんなに怒らせているのはお前」「お前が失礼なことをしたんだから、俺は怒って当然」「俺をこんなに怒らせて、どうしてくれるんだ」と思っているのです。
お付き合いしている男性から、そんな言葉が出てきたら、要注意ですよ。結婚は、怒りやすい人、キレやすい人とするよりも、日々楽しく穏やかな時間を紡げる相手とした方が幸せです。
仲人・ライター 鎌田れい