出産直後に経験した“長い夜”の出来事を描いた漫画がSNS上で話題となっています。出産した日の夜、赤ちゃんがちゃんと息をしているか不安になったり、泣きやませようとしたりして眠れなかった女性。そこへ看護師さんが現れ…という内容で「よく分かります」「そんなこともありました」「今思うと懐かしい」などの声が上がっています。作者の女性に聞きました。
「長い夜」はずっと続いた?
この漫画を描いたのは、むぴーさん(ペンネーム)です。インスタグラムやブログで、子育て漫画を発表しています。ウェブメディア「Conobie」で連載した作品が2020年2月、「母がはじまった」(PHP研究所)として書籍化されました。
Q.この主人公のエピソードは、ご自身のものなのでしょうか。
むぴーさん「これは『母がはじまった』という作品の中で、『第2日』として描いたものです。このエピソードがそのまま私の経験というわけではありませんが、ここで描いている感情は、私が当時感じていた気持ちをもとに描いています」
Q.「長い夜」は入院中、ずっと続いたのですか。
むぴーさん「入院中、ずっと続きました。それどころか、退院してからも半年以上ずっと続いていたんじゃないかと思います(笑)確かに1カ月くらいすると多少慣れて、夜泣き対応も入院初日よりは上手になってきましたが、やっぱり大変なことに変わりはなかったですね」
Q.言葉をかけてくれた看護師さんは、どのような存在だったのでしょうか。
むぴーさん「赤ちゃんが泣きやまず、『無理~!』というときに、さっそうと助けに来てくれる看護師さんをスーパーマンのように感じていました。とても頼りに感じていたからこそ、『退院したら、これを看護師さんの手助けなしでやっていけるのかな…?』という不安がすごくありました」
Q.この眠れないつらさを、入院中にどなたかと共有されましたか。
むぴーさん「長男を産んだ産院は、お母さん同士の交流があまりないところだったので、眠れないつらさを愚痴ったりすることは、あまりできませんでしたね。でも、夜中に別の部屋から聞こえてくる赤ちゃんの泣き声に『大変なのは私だけじゃない。起きてるのも私だけじゃない』と、ホッとしたりもしました」
Q.今でも、眠れないつらい日々は思い出されますか。
むぴーさん「正直、あまり思い出さないです(笑)思い出そうとすれば思い出せますが、普段は頭の隅っこの、裏の方に追いやられてますね。今は子どもたちも4歳と2歳で、夜中に起きることもあまりなくなったので、もう体がそれに慣れてしまい…当時はあんな細切れの睡眠でよく1日やってたなと思います」
Q.産後間もないお母さんたちに、かけたい言葉は。
むぴーさん「『もし今、赤ちゃんをかわいいと思えなかったり、自分は良い母親じゃないと感じたり、隣に子どもがいることを、想像していたより喜べなかったりしたとしても、そんなふうに思ってしまうのは自分だけじゃないよ。弱音を吐いてもいいし、みんなそう感じながら母親になったんだよ。それは当たり前のことだよ』と伝えたいです。そして、今晩、いつもより少しでも長く眠れるように願っています」
Q.この作品を、どんな人たちに届けたいですか。
むぴーさん「この漫画はもともと、『この弱々しい命をちゃんと育てられるのだろうか』という不安の中で、1人、夜の病室で泣いていた4年前の私に読んでもらいたいなと思って描いた作品です。これから新しい命を迎える人や、かつて、長い長い夜に1人声を殺して泣いていた人、そして、今、眠れない長い長い夜を過ごしている人に読んでもらえたらうれしいです」
Q.漫画について、どのような意見が寄せられていますか。
むぴーさん「『このリサは私だ』『こう感じたのは自分だけじゃなかったと分かって安心した』『妻の気持ちがよく分かった』『数十年前の経験を思い出した』など、たくさんの反響がありました。4年前の私にはこんなに仲間がいたんだなとうれしくなりましたし、心強く思いました」
オトナンサー編集部