新型コロナウイルス感染者の療養期間について、政府は9月7日、原則10日間から7日間へと短縮しました。しかし、医療の専門家からは懸念の声も出ているようです。デルタ株など以前のタイプと比べ軽症者の割合が増えているとはいえ、後遺症に苦しむ人が一定程度存在し、感染リスクの高まりが懸念されます。今後の注意点などについて、内科医の市原由美江さんに聞きました。
感染リスクは上昇、マスク着用を
Q.新型コロナウイルス感染者の療養期間について、短縮されたことによって期待されることと、リスクを教えてください。
市原さん「療養期間が短縮されることで、感染した人が、従来よりも早期に社会復帰でき、社会経済活動の維持が期待できます。
一方で、個人差はありますが、療養期間が終わってもウイルスを排出する人が一定の割合でいることは確かなので、他人にうつさないよう注意する行動を一定期間続けなければ、感染を拡大させてしまう可能性があります。
国立感染症研究所の分析によると、感染した有症状者のうちウイルスを排出する人の割合は、発症から11日目だと3.6%ですが、8日目だと16%です。つまり、7日で療養期間が終わって8日目から外出すると、およそ6人に1人は、まだ他人にうつす可能性があるわけです」
Q.感染リスクの高まりを警戒する声が医療従事者の間にあるようですが、それでも短縮する意味は。
市原さん「新型コロナウイルス感染症による自宅待機や療養の影響で、医療機関や公共交通機関、学校関係者、配送業者などあらゆる職種の人手が足りずに、社会経済活動が滞った現実があります。ウイルスを排出していても、マスクを常時着用するなど他人にうつさない行動をすることは可能なので、療養期間を短縮することで社会経済活動を維持することを優先したのだと思います」
Q.療養期間の短縮によって、以前より早めに仕事や学校に復帰できた人は、どのような点に注意して行動すべきでしょうか。
市原さん「必ずマスクを装着し、食事はなるべく静かにすることです。高齢者など重症化リスクの高い人と接するのも避けた方がよいでしょう。さらに、療養期間が短縮されてもせきなどの症状が強い人は、自主的に自宅療養の期間を延長するなど、臨機応変に対応する必要はあると思います」
Q.オミクロン株が主流となってから軽症者の割合が増え、新型コロナを軽視する人が増えているようですが、当初の症状が軽症でも、後遺症が続く人がいるとの情報があります。事実でしょうか。
市原さん「新型コロナによる当初の症状が軽症でも、後遺症が続く人がいることは事実です。倦怠(けんたい)感、息苦しさ、せき、胸痛、不眠、集中力の低下、味覚障害、嗅覚障害など、さまざまな症状があります。かなり重い症状の人もいるようです」
Q.療養期間が短縮された状況を踏まえて、今後、どのように感染対策をすべきか、教えてください。
市原さん「小まめな手洗いや消毒、マスクの装着が基本ですが、屋外や他人との距離が保てる場所ではマスクを外してもいいと厚生労働省も提言しています。療養期間が短縮されると感染が広がると考えがちですが、療養後の行動でそれは予防できます。個人個人が感染を広げない行動が今後も必要ですが、特性の変わってきたコロナと共存する方向に向かうこともとても大切だと思います」
オトナンサー編集部