朝晩を中心に涼しくなってきていますが、それに伴い、体のだるさや頭痛などの症状に悩まされている人が増えているようです。SNS上では、「体がだるい」「疲れがたまる」「頭が痛い」などの声が上がっています。
夏から秋への季節の変わり目に体調不良になるケースは「秋バテ」と呼ばれていますが、なぜこのような現象が起きるのでしょうか。夏バテとは何が違うのでしょうか。秋バテの原因などについて、あんどう内科クリニック(岐阜市)の安藤大樹院長に聞きました。
「自律神経の乱れ」「セロトニンの減少」が理由
Q.夏から秋への季節の変わり目に体調不良となる原因について、教えてください。
安藤さん「ようやく暑さが和らぎ、『さあ食欲の秋だ!』『スポーツの秋だ!』と元気が出てくるはずの時期を迎えるはずなのに、『何となく体がだるい』『食欲が出ない』『頭が痛い』などの症状を経験したことがある人は多いのではないでしょうか。秋にこうした症状が出る原因は、『秋バテ』かもしれません。秋バテの原因は次の通りです」
■夏バテの長期化
夏の疲れがなかなか抜けなくて、そのまま秋バテに突入してしまったパターンです。昔の夏バテは、単純に暑さによるエネルギーの過剰な消費によるものでしたが、今の夏バテは、冷房で体を冷やし過ぎたり、冷たい飲み物や食べ物の過剰摂取で内臓を冷やし過ぎたりすることによって「自律神経」が乱れた結果、全身の血液の巡りが悪くなって起こります。その不調が、秋になってだるさや肩こり、食欲不振となって表れてきます。
■急な冷え込みによる自律神経の乱れ
秋になると、体が気温の変化についていけなくなることがあります。また、9月から10月は、同じ週の中でも真夏日があったり、肌寒い日があったりするなど、気温が安定しません。さらに、1日の中でも、朝晩の寒暖差が大きいのもこの時期の特徴です。
このような急激な気温の変化に対応するため、自律神経が体中の器官をコントロールしようと働きます。このコントロールが追い付かないのが、秋バテの原因の一つです。
■急な天候変化による自律神経の乱れ
9月は8月に引き続き台風の発生数が多く、近年は接近数、上陸数ともに増えてきています。また、一般的に9月に上陸する台風は、勢力が強いのが特徴です。さらに、台風の数が減り始める9月の後半には秋雨前線が発生し、そこに上空からの寒気が流れ込むと前線の活動が活発になり、各地で大雨を降らせます。
この不安定な気圧の影響が、耳の奥にあり、体のバランスを取る働きをしている「内耳」に作用し、目まいや頭痛といったいわゆる「気象病」を引き起こしやすくなります。慢性的な目まいや頭痛は、結果的に自律神経のバランスも乱してしまいます。
■日照時間の減少
「秋の日はつるべ落とし」といわれているように、秋は他の季節に比べて日が暮れる時間が急に早くなります。日照時間が短くなり、太陽の光に当たる時間が少なくなると、脳内の神経伝達物質の一つである「セロトニン」の分泌が減ってしまいます。
セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、脳の興奮を鎮め、精神を安定させる作用を持っています。これが減ることにより不安感が生じるほか、意欲の低下をきたし、体の不調につながります。「秋は物悲しい季節」などといわれるのはそのためなのです。
Q.夏バテと秋バテに違いはあるのでしょうか。
安藤さん「先述のように、夏バテの長期化が秋バテにつながることがあるため、夏バテと秋バテの厳密な線引きは難しいです。実際に夏バテと秋バテが起こる原因は、おおむね同じで、寒暖差や気圧変化に伴う自律神経の乱れが主な原因となります。
ただ、夏バテは、暑さによるエネルギーの消費のほか、多量の発汗による水分不足やミネラル不足、食欲低下による栄養不足なども原因です。秋バテにもそういった要素はありますが、より寒暖差や気圧変化による『自律神経の乱れ』と、日照時間の減少による『セロトニンの低下』に伴う症状が目立つようになります。
自律神経の乱れは頭痛や目まい、ほてり、汗、口の渇き、喉の詰まり、動悸(どうき)、息苦しさ、おなかの張り、節々の痛みなど、さまざまな症状を引き起こしますが、ポイントは『1つの臓器の症状だけでは説明できない』ということです。これは、自律神経が複数の臓器を同時に支配しているためです。
ある意味、『さまざまな症状が同時に起きて原因がよく分からない』といったケースが、自律神経が乱れたときの典型的な症状であり、秋バテの特徴と言えます。
セロトニンの主な役目は、ドーパミンなどの脳を興奮させるホルモンを抑制し、脳を鎮静化させる働きです。また、へんとう体という不安や恐怖に関わる器官の活動を調節することにより、不安や恐怖によるストレスをコントロールします。
セロトニンが減ると、イライラ感や落ち着かない感じが強くなったり、恐怖感や不安感が強くなったりします。日照時間の減少が原因の一つである秋バテは、夏バテに比べてメンタル不調を来しやすいのです」
オトナンサー編集部