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清水・鄭大世が走り続ける理由「僕は夢を見ている」。サッカーで掴んだ両手いっぱいの幸せ

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清水エスパルスのFW鄭大世【写真:Getty Images】

清水エスパルスのFW鄭大世【写真:Getty Images】

サッカーは夢を与えられるのか。その問いに正しい答えはあるのだろか。1本の記事をきっかけ生じた疑問を、清水エスパルスのFW鄭大世にぶつけた。酸いも甘いも噛み分けた35歳は、サッカーで見た夢と幸せについて惜しみなく語ってくれた。(取材・文:舩木渉)

「人間思い描いたことを実現するには…」

 サッカーは夢を与えられるのか。その問いに正しい答えはあるのだろか。1本の記事をきっかけ生じた疑問を、清水エスパルスのFW鄭大世にぶつけた。酸いも甘いも噛み分けた35歳は、サッカーで見た夢と幸せについて惜しみなく語ってくれた。(取材・文:舩木渉)

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 この原稿の着想を得たのは、ある1つのツイートからだった。

「J1の最前線で活躍し続ける選手は当然偉大で価値があるけど、こういうのもそれに匹敵するほど偉大だし、より多くの人に夢と可能性を示してると思う」

 これは清水エスパルスに所属するFW鄭大世が、筆者の「マリノスGKパク・イルギュが開いた夢の扉。地域Lも経験した29歳の挑戦、不断の努力が実ったJ1初舞台」という原稿について投稿してくださったものだ。

 まさか自分の書いたものに、現役Jリーガー、そしてパク・イルギュと同じく在日コリアンとしてのルーツを持つ選手から反応があるとは思っていなかった。なので、そのお礼も兼ねて6日に行われたFC東京との試合後にツイートの140文字に収まらない彼の考えを聞いてみようと鄭大世を直撃した。

「イルギュに関しては、サッカー選手に対して夢を与えていると思うんですよね。子どもじゃなくて、全てのカテゴリの選手たちに対して、『俺もいけるんだ』という道を示したという意味で、すごく偉大だと思う。それにはすごく意味があって、そう(ツイッターに)書きました。

ずっと最前線でやっている中村憲剛さんだとか遠藤(保仁)さんとか、中村俊輔さんとか中澤(佑二)さんとかは、やっぱりトップのトップにいるスターなので、みんなに認知されながら『自分もああなりたい』という夢を与えるかもしれないけど、イルギュにしても、(大分トリニータの)藤本(憲明)にしても、現実的な可能性をみんなに示したと思う。それはものすごく価値があることで。人間思い描いたことを実現するには、『ダメだ』と思ったらダメ。誰も100mで10秒は切れないと言っていたのに、切った瞬間にドバドバ(9秒台が)出てくるわけじゃないですか」

 パク・イルギュがそうだったように、鄭大世もかつては夢を追いかける1人のサッカー選手だった。プロになるという道は、限りなく細く険しかった。だが、川崎フロンターレでJリーガーになると、朝鮮民主主義人民共和国代表として2010年の南アフリカワールドカップ出場やブンデスリーガ挑戦などを次々に実現していく。

石川直宏に刺激を受けて…

 朝鮮大学から直接Jリーグに進んだ初めての選手となった鄭大世を追うように、同校からは続々と実力ある選手が輩出されている。35歳になった魂のストライカーは、夢見る青年から、不断の努力の末に夢を与える一流選手となった。

「朝鮮大学は小平にあるんですけど、自分が大学生の頃も街中には石川直宏さんのポスターが貼ってありました。そうしたら実は1個上で、Jリーグで凄く輝いている姿を見て、凄く悔しかったし、自分も絶対…と思っていました。その後、この味の素スタジアムに来て(FC東京を相手に)ハットトリックを決めて、FC東京からボコボコ点を取ってますよ」

 鄭大世が大学生だった時期は、ちょうど石川が日本代表候補などに選ばれて輝いていた頃と重なる。そして2007年10月のJ1第30節、川崎フロンターレの一員としてFC東京戦に先発出場した鄭大世はプロ入り初のハットトリックで7-0の快勝に貢献。同じピッチには34分から途中出場した石川もいた。小平の街中のポスターで見た憧れの選手の目の前で、大仕事をやってのけたのである。

「それぞれの地域にいる子どもたちは、そこにいるJリーガーたちの姿を見て大きくなるわけで、目標とする選手が、プロチームが各地域にあるJリーグの意味はものすごく大きいと思います。僕も自分の生き残りで必死ですけど、静岡県でテレビを見たり、試合を見に来てくれた子どもが、『ああなりたい』と思ってくれたらそれは嬉しいし、サッカー選手冥利につきる。プロでやっている以上はずっとそういう存在であり続けたいですね」

 鄭大世は夢の先にある幸せを、サッカーで掴んだ。今も少年時代の鄭大世と同じように可能性を信じて前進しようとしている選手たち、子どもたちは静岡県に限らず全国にも多くいるだろう。「昔はやっぱり有名になりたいとか、スターになりたい、超一流になりたい、海外に行きたいという、そういう野心だけでやっていた」という35歳は、夢の追い方と理想の幸せのカタチが、年齢を重ねるごとに変化してきているとも語る。

「今は自分の子どもとかに誇らしいですね。静岡とかで歩いていても、みんな僕のことを気づいてくれるので、子どもは不思議じゃないですか。『みんな何で気づいてくれるんだろう?』って。それが当たり前だと思ってはいると思うんですけど。(子どもたちもお父さんがサッカー選手だと)わかっています。サッカー大好きで、家の庭でいつも一緒にサッカーしています。幸せですね、やっぱり。

自己満になってしまうのかもしれないけど、今はすごく身近なところに満足することができるし、静岡はみんなサッカーに対する関心が高くて、今はエスパルスで楽しいです。本当にエスパルスでずっとやりたいと思っているし、いい時間を送っていますね」

「プロサッカー選手・鄭大世」として

 娘と息子、2人の子どもたちと妻がいる。静岡に応援してくれるエスパルスファンがいる。夢を追い続けきた鄭大世は近年、「モチベーションの質が変わった」という。今は目標や夢のために誰かに自分を認めさせるのではなく、自分で自分を認めることに精力を注いでいる。

「そうするためにはどうするか。絶対に1日の努力の損切りは絶対にしない。今日できることは明日に持ち越さない。今日できることは全部やりきって明日を迎える。先のことが不安になるのはみんな一緒で、今はJ1の最前線でやっているけど、こんなことって昔からしたら想像もできなかった。大学生のときに『行けてJFLかな』と思っていたら、ブンデスリーガまで行って、ワールドカップまで行って、J1の舞台でこの歳でもやっているというのはすごく幸せなこと。

それを噛み締めながらも、今日にベストを尽くして、家族と幸せに暮らす。僕が不安になったら家族も不安になっちゃうと思うので。家族の長として、そこでちゃんと精神的にもしっかり武装してやっていますね。だいぶ変わりましたね、年取って。昨年と今年がだいぶデカいですね。状況的にあまり良くないので、その分精神的にすごく学ぶものも多いです」

 35歳になって「現役引退」の文字もチラついてくる。それでも「サッカー、めっちゃ楽しいです」と屈託なく笑う。そうやって笑って過ごすために、毎日の取り組みに全力を尽くす。これが鄭大世が長年かけて導き出した、夢の追い方だった。

「今は本当に純粋にサッカーを楽しんでいます。いつまでできるかわからないから、今日1日をめっちゃ大事にしたい。やる気のない1日も、怪我でも1日でも早く戻れたら『1日』だし、プロが終わったら『プロサッカー選手・鄭大世』じゃなくなっちゃうんで。そう考えたら、今、今日1日『プロサッカー選手・鄭大世』になれる今日に感謝して、楽しんでやりたいなと思ってやっています。

プロサッカー選手じゃない自分? 想像できないです。引退した後、何をやるのか、やりたいことはあるのか。何もないですもんね。B級指導者ライセンスを取ったりしても、やっぱり教えるよりもサッカーをやっている時が一番楽しいから。生涯現役ができたらいいですけど、終わりが絶対に来る職業なので、そうはいかない。じゃあせめて1年か2年か…わからないけど、1年や2年を凝縮させた1日にしたいなと思ってやっています」

「今ある幸せを絶対に取りこぼさないように」

 プロサッカー選手は実力でしか生き残れない世界に生きている。当然、年齢を重ねれば肉体的な衰えを避けることはできないし、それによってパフォーマンスが低下していくのを食い止めるのは難しい。50歳を超えてもJ2のピッチに立ち続ける三浦知良のような存在は例外中の例外。だからこそ「一番楽しい」サッカーをトップレベルでやり続けられる間は、精一杯楽しめるように毎日に全力を尽くす。それが鄭大世の生き方だ。

「僕はサッカーで夢を見させてもらっている。これは現在進行形です。もう若い時とは比べものにならないくらい、今はサッカーが楽しいので。若い頃は『野球選手の方が稼げる』『何で野球やらなかったんだ』みたいな、ない物ねだりとか、取り越し苦労とか、そういういらないことばかり考えていたんですけどね。

今も不安はあるけど、多くのものをサッカーに与えてもらった。キャリアも、ワールドカップという経験もそうだし、愛する美しい奥さんに、かわいい子どもたちに、それなりに年俸ももらってきたし、蓄えもできているし。それさえもできない人だっていくらでもいるのに、自分が今の状況を悲観していたら、その人たちに失礼だと思う。スタメンで出れないにしても、途中から出させてもらっている、メンバー外の人だっていっぱいいるし、その人たちにも失礼になるから。今あるものに感謝してやっています」

 サッカーが夢を与えるとは、この世界でよく聞く言葉だ。ただのゲームやエンターテイメントにとどまらない力がある言っても、綺麗ごとに聞こえるしれない。だが、実際にサッカーに夢を見ている、幸せを感じている人々は数多くいる。鄭大世もその1人だ。

 川崎フロンターレでプロになり、朝鮮民主主義人民共和国代表として2010年の南アフリカワールドカップに出場。初戦のブラジル戦で国歌斉唱に感極まって号泣していたのは有名な話だ。その後、ドイツへ渡ってボーフムへ移籍、ケルンではブンデスリーガ1部のピッチも踏んだ。水原三星ブルーウィングスを経て加入した清水では、J2降格やJ1昇格も経験した。そうやって幾度となく困難や挫折を味わいながら、その度に立ち上がって前を向いて、夢を見て、懸命に走り、毎日の幸せに変えてきた。

「プロとしてとか、サッカーとは自分にとって何かとよく聞かれるけど、とりあえず自分のできることのベスト、今日1日何ができるかというのを考えることでいっぱいです。ある程度年齢を重ねてきて、引退という言葉がチラついてきていますけど、どこまでやるのか、カテゴリどこまで下げてやるのか、将来が不安になったりするんですよね。だけど一番大事なのは、1日何をできるか。今日どうベストを尽くすかというのと、今ある幸せを絶対に取りこぼさないよう必死にやっています」

 夢も幸せもカタチは人それぞれ。エスパルスの背番号9は彼なりのやり方で、理想の姿を見つけ出した。今年で35歳、まだまだ体も動く。14日に行われたジュビロ磐田との静岡ダービーでは先制点を決めて吠え、今季初勝利に嬉し涙を流し、溢れる思いをツイッターにも綴った。サッカーへの情熱が尽きることはない。幸せを両手いっぱいに抱えた鄭大世は、毎日を大切に、これからも走り続ける。

(取材・文:舩木渉)

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