大人なら誰でも経験のある「小学一年」時代。今では忘れてしまったことも多いですが、幼児を卒業したばかりの子らは、大人がびっくりするほどのみずみずしい哲学を持っています。今回はそんなこどもたちの“つぶやき”を、書籍『一年一組 せんせいあのね こどものつぶやきセレクション』(理論社)より一部抜粋してお届けします。
けっこん
絵:ヨシタケシンスケ 「一年一組せんせいあのね」より
けっこん
なかむら あきひろ
おとうさんはおかあさんが
けっこんしてっていったからもらってやったとゆうし
おかあさんはけっこんしなかったら
おとうさんがうみにとびこんでしぬっていったから
きてあげたっていうし
ぼくはどっちがほんとうかわからないんです
でもぼくはどっちでもいいんです
ぼくがいることがだいじなんだから
うそ
絵:ヨシタケシンスケ 「一年一組せんせいあのね」より
うそ
ごうだ なおと
ぼくは学校をやすみました
おかあさんにうそをついたからです
なんのうそかというといえません
おかあさんをなかしてしまいました
ぼくもなきました
おかあさんは
こんなおもいやりのない子とはおもわんかった
こんなくやしいおもいをしたのは
はじめてやといいました
ぼくはあほでまぬけで
ばかなことをしたとおもった
ぼくもかなしくてこころがいたい
それでもおかあさんは
なおちゃんのことがだれよりもすきやでと
だきしめてくれました
もうにどとしません
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書籍『一年一組 せんせいあのね』について
\40年の時を超えて届く こどもたちの 「せんせいあのね」/
「あのね帳」を知っていますか?
鹿島和夫と担任した小学校一年生たちとの、いわば交換日記であった「あのね帳」から、 珠玉のことばたちをセレクト。新たにヨシタケシンスケの絵とタッグを組み、大人がハッとするこどもたちの言葉が心をゆさぶる一冊です。
■考える力を育み、本音で語り合える関係をつくる「あのね帳教育」
「あのね帳」は、こどもたちと担任との、いわばラブレターでもあり交換日記でもありました。くすっと笑えるもの、じーんと胸をうつもの……生のことばは、実にふくよかでみずみずしく、熱をもってからだのどまんなかまで迫ってきます。
■「せんせいあのね」 は今も日本中で生まれています
全国に広まり、数多くの児童と先生の間をあっため、つなげてきた「あのね帳」。今も、あちこちの教室で、新しい一年生の「せんせい、あのね」がうまれています。
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この年代のこどもならではの眩しいほどの感性を目の当たりにして、あの頃の自分や家族を思い出したり、我が子を感慨深く眺めたり……。最初から最後まで様々な感情が押し寄せ、何度も読み返したくなる一冊です。こどもと一緒に読んで、感想を語り合う時間もすてきですね。
選者|鹿島和夫
1935年大阪府に生まれる。神戸大学教育学部卒業後、神戸市小学校の教員として勤務し、主に一年生を担任。日記ノート《あのね帳》をとおして、表現活動の実践に取り組む。学級ドキュメンタリー「一年一組」は芸術祭優秀賞を受賞し、ユニークな学級づくりが反響をよぶ。第14回北原白秋賞、第44回読売教育賞最優秀賞を受賞。著書に「一年一組せんせいあのね」全4巻「1ねん1くみ子どもの詩の本」全10巻(理論社)など。2023年没。